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2023.12.06

【連載】メタバースを使った壮大な実験と現状報告

メタバースクリエイター&ディレクターの いけもとしょう さんにメタバースのあれこれを語っていただく本連載。
今回は、自らメタバースの空間を創っている いけもと さんのまさにリアルな実験と報告です!

いけもとしょう

クリエイター/ディレクター

最愛の娘へ贈る「おばけの世界」を「絵本」や「メタバース」に創っている人。創造を続けている目的は『100年残るIPとしておばけのパッチを新たな文化にし、子どもにおもしろい未来を贈る』。

note|https://note.com/ikemotodir

どうも、メタバースクリエイターの「いけもとしょう」と申します。今回は『メタバースの空間を創っているクリエイターが今まさに進めている実験と現状のご共有』をさせて頂きます。私いけもとの話ですが、「1人のクリエイターがただやっていること」と侮ることなかれ、です。

なぜメタバースに「街」を創るのか

まずは私の現状を短く。

私いけもと、最愛の娘へ贈る絵本「おばけのパッチ」を2022年10月24日に出版しました。

そして2022年12月末から、その絵本の世界をメタバース”The Sandbox”に創っています。

目標としては、2024年9月30日までに完成させて、その日が娘4歳の誕生日なので、娘と一緒におばけの街をアバターで巡るという感じ。私のクリエイティブの意義であり目的は「最愛の娘におばけのパッチ君の創造を通して、おもしろい未来を贈りたい」なのです。

……とい、「なぜ絵本の次にメタバース?」とよく人に聞かれました。

「続けて絵本描くんじゃないんですか?」って。

これにはちゃんと、こんな感じの理由があるのです。

①絵本からゲームへの流れ

②今後の設定資料のために

③街というコミュニティを創りたい

少し細かくお話しましょう。

①絵本からゲームへの流れ

私が創りたいのは「絵本」ではありません。

「おばけのパッチの世界を通して、娘へ贈るおもしろい未来」を創りたいのです。これは一生続くクリエイティブなのです。

もちろん時間がたてば、娘は成長します。絵本が大好きだった娘も大きくなって、別のものを好きになるかもしれません。つまり絵本だけを創り続けてもしょうがないのです。

私は「自分が子どもの時、何にハマっていたかな」と思い返した後、「娘は小さいころからスマホやデジタルが当たり前の時代を生きているよな」と考えました。そして私自身が今、何を創りたいか?

結果、絵本の次に創るものとして浮かんだものが「メタバース」になります。メタバースはゲームのようなものですし、娘が成長する過程で「絵本」の次に触れるものとしてはいいなと思ったからです。

②今後の設定資料のために

上記の通り、私は「おばけのパッチの世界を通して、娘へ贈るおもしろい未来」を創りたいわけですので、今後「メタバース」だけを創るつもりもさらさらございません。

いつかこの世界観で「3Dのアニメーション」や「音楽」を創り、娘に贈りたいなと考えています。

特に「3Dのアニメーション」は絶対に創りたいんです。という思いがある中で、「3Dのアニメーション」を創るとなると、キャラクターだけいても仕方がありません。確固たる世界観となる舞台「街」が必要になります。

つまり、「絵本」に登場する「街」を「メタバース」に創ることは、いつか創る「3Dのアニメーション」の設定資料を創っていることになります。

もう少し細かいお話をすると、「絵本」の時点で私が創りたい世界観の様々な設定は考えていましたが、「メタバース」に「街」を創ることで、より深い設定を考えるようになりました。

「おばけの家って資材は何を使ってるの?」

「その資材はどこで取れるの?」

「その資材が取れる地層や天候ってどんなの?」

「建物に灯りがあるけど、電気は通ってるの?」

「ということは発電がされてるの?その方法は?」

「おばけたちってそもそもどんな風に生活してるの?」

みたいな。

③街というコミュニティを創りたい

現代を生きるうえで「コミュニティ」が大切なことは今更言うまでもないと思いますが、私が考える一番身近な「コミュニティ」こそが、「街」や「国」だったのです。

「国」というコミュニティ単位で考え方や生活様式は変わるし、「街」というコミュニティ単位で街並みや環境は変わります。だからこそ、考え方や思想を同じくして持つ者同士が集まるコミュニティを創り、「街」にすることで様々な実験ができると考えました。

The Sandboxに「街」を創り始めた経緯

ではなぜ、数あるメタバースから選んだのが”The Sandbox”なのでしょう。

大きく理由を分けると3つあります。

①ボクセル調だから

②スマホ版が出るから

③自分が創れたから

④世界を巻き込む経済圏を創りやすい

順番にお話すると…

「①ボクセル調だから」はマインクラフトの流れがあります。

要するに『すでに子どもたちを中心に、ボクセル調は浸透しているので受け入れられやすい』ということです。

「②スマホ版が出るから」はそのままの意味で、”The Sandbox”は近々スマホ版が出る予定です。

スマホの普及率は……言うまでもありませんね。

つまり、より多くの人に、そして何より子どもたちに空間を見てもらえる可能性が増えると思ったのです。

「③自分が創れたから」に関してですが、私、3DCGを一切触ったことがありません。

厳密にいうと、blender(3Dモデリングソフト)やUnreal Engine(ゲーム開発ソフト)を触ったことはあるのですが、数日で挫折してきたのです。

しかし、昔から3DCGには惹かれていたという中で、出会ったのが”The Sandbox”。

blenderを触れなかった私もVoxEDIT(立方体を積み上げてアバターや建物を創るソフト)は触れたし、Unreal Engineを触れなかった私もGAME MAKER(The Sandbox用のゲーム開発ソフト)は使えました。

最後に「④世界を巻き込む経済圏を創りやすい」について。

“The Sandbox”はイーサリアムブロックチェーン上のメタバースです。

LAND(ランド)という土地やアセットはETH(イーサリアム)やSAND(サンド)と言った暗号資産で取引されます。

また、アセットの売買や空間に入った際の入場料などを、ユーザー側に徴収することも可能です。

さらにLANDを人にレンタルし、そのレンタル費用を頂く事なども可能です。

そしてこれら全て、暗号資産で行うため対象ユーザーは全世界になるのです。

メタバースの住民票が売れるという奇々怪々な出来事

これらを踏まえた上で、ずーーーーーっと前からしてみたかったこと。

それが「おばけ住民票」の販売です。

要するに「メタバース”The Sandbox”に創っている「おばけの街」に、おばけとして暮らせるよ!」というもの。

住めるとは言うものの、実際はその住民票を手に入れて下さった方のお名前をおばけにつけて、そのおばけをメタバース設置する”だけ”。

ちなみに価格は500円です。

……2023年現在を生きる人間のほとんどが「は?なにそれ」って感じだと思います。

そんなもの買う人がいるわけない、と。

何の意味もないじゃないか、と。

インフルエンサーでもなんでもない、影響力もない人間が創るよく分からない「街」のよく分からない「住民票」を誰が買うのか、と。

……結果、2日間で16人の方が手にしてくださりました。

売上とか、購入者数とか、そんな低い次元の話はどうでもよいのです。

今のこの話に、どれだけの「可能性」を見出せるかどうかが大事なのです。

「実態」もなければ「機能」もないものが、売れているという事実。

そしてそれを手にする人がいるという事実。

この事実こそが大きな可能性なのだと、私は感じています。

「目に見えず、手で触れられないもの」を買ったときの圧倒的興奮と所有感。

私自身、2021年9月に”The Sandbox”のLANDを約10万円で購入したときに感じた感覚です。

ただ、この経験をほかの人に話すとあまり理解されません。

この感覚に気付けていない人も多くいます。

池本が所有しているLAND。 様々な人が土地を所有しているのが見てわかります。

2つ言えることがあるとするなら、「目に見えず、手に触れられないもの」にも需要があるということ。

そしてこの興奮と所有感に気付いている人はもちろん、生み出せる人も、世界にまだあまりいないということです

では。