クリエイター/ディレクター
最愛の娘へ贈る「おばけの世界」を「絵本」や「メタバース」に創っている人。創造を続けている目的は『100年残るIPとしておばけのパッチを新たな文化にし、子どもにおもしろい未来を贈る』。
まずは私が、「メタバース」のゲーム性に否定的だった時のお話を――。
「メタバース」とは、デジタル上の仮想空間。
アニメーションの映画で言うと「サマーウォーズ」「竜とそばかすの姫」「ソードアートオンライン」「レディ・プレイヤー1」とかの世界です。
そこはまるで「ゲーム」のような世界。
だけどそれはゲームとは違い、コミュニケーションや実際の経済がうねる、そんな世界。そして私は、この「メタバース」に惚れた1人のクリエイターなのです。
なんてったって圧倒的に絶対的に、『1つの世界を創りあげてる感』が楽しくてたまらないから。だからこそたくさん創り、たくさん学んでいます。
メタバースの領域の先駆者たちの本を読み漁り、幾多ものメタバースに関する記事を読み、様々な空間を1人で歩き回り……。様々な「メタバース」に触れた結果、思っていたことが1つあります。
――「メタバース」にゲーム性っていります?
制作サイドは『空間に来てもらった人がコンテンツを見るだけじゃなくて、楽しめるように!』と、ゲーム性をつけたのでしょう。
でも、ゲームがしたかったら「ポケモン」「ドラクエ」「モンハン」をした方が楽しくないですか?
なんでわざわざ、世界中に数多ある「おもしろいゲーム」より「つまらないゲーム」をメタバース空間に入れちゃうの?
……と、ゲームもメタバースも大好きな私は思っていました。
ゲーム性をつけることで空間が『つまらなくなるなら、いらないじゃないか』。
これが私の正直な意見でした。
そんな「メタバース」のゲーム性に対してツンツンしていた私ですが、ありがたいことにお仕事として、とある企業さんのメタバース空間の制作をすることになりました。
厳密にいうと私はディレクター兼プロデューサーで、私と一緒に空間を創ってくれているクリエイターさんが、実際の制作をするという感じです。
詳細は省きますがクライアントとの打合せの中で、私は『メタバースにゲーム性はいらないっすね!』みたいなことを言ったんです。
先に書いた通り、本気で「メタバース」におけるゲームに必要性を感じていなかったので。
その打合せの後、この私の考えに対して、一緒に空間を創ってくれているクリエイターさんからこんな話が。
「実は私は、メタバース空間にゲーム性を取り入れることに賛成です」とのこと。
もちろん理由も教えてくれました。
「例えば友達とメタバース空間で遊ぶとき、または同じ空間にたまたま居合わせた気の合う人と空間を巡るとき、その空間に設置されているゲームを一緒にプレイするとめちゃくちゃ盛り上がる。そしてゲームクリアしたとき、達成感もあるし、喜びを共有できる。だからメタバース空間にゲーム性を取り入れるのはありだと思う」
この「感情の共有」には「なるほど!」としか思いませんでした。
もちろん「私の考えが全て間違ってました!」というわけではありません。
ただ私自身、「友達とメタバース空間を巡る」という経験と可能性を完全に見落としていたのです。
だいたい1人で空間を巡っていたので……。
だからこそ「そういう考え方は確かにあるな!」という納得がすごかったです。
そういえば、なのですが……。
まだ娘が産まれる前、私はずっとスマホゲームをしている時期がありました。
厳密には、おもしろそうなスマホゲームを探している時期。次から次へとおもしろそうなスマホゲームがリリースされて、そのゲームでひたすら遊んでいました。
でも、ほとんどのゲームは長続きせず、すぐに飽きて「他のゲームないかなー…」とさ迷い、そしてまた新しいゲームを始めての繰り返し。そんな時がありました。
よく考えてみたら、あの時たくさん探して遊んで、すぐ飽きていたスマホゲームは、全て『1人』で遊んでいたんです。
では、長く続いたスマホゲームは何なのか。
スマホゲームで1番ハマり、長続きしたのは、大学の時に同級生やバスケサークルの仲間のみんなで一緒にやっていた『パズドラ』です。
誰かが強い敵を倒せたら、倒し方をみんなで『共有』し、ガチャで強力なキャラクターを手に入れたらみなに『ドヤ』ってた。
1人でやってたスマホゲームには、この感動や悔しさの『共有』がなしですし、いいキャラクターを手に入れた時『ドヤ』れる相手がいなかったのです。
そして、この『共有』と『ドヤ』は、メタバースにおいても大切なポイントなのだと気づかされました。
「共通の仮想敵」を生み出すことは、様々な場面で有効に活用されますが、「メタバース」においてのゲーム性は、これに近いものがあるかもしれません。
ゲームという1つの壁に対し、ともに乗り越える人がいると喜ぶや悔しさを『共有』できるし、せっかくなら『共有』するために友達と来ようとなります。
この小さな仕掛けの積み重ねが、人が訪れたくなるメタバース空間のヒントなのかもしれません。
では。