1. MetaStep TOP
  2. ビジネス活用を学ぶ
  3. 【連載】クリエイターが思う「ワクワクするメタバース空間」とは

2023.12.14

【連載】クリエイターが思う「ワクワクするメタバース空間」とは

メタバースクリエイター&ディレクターの いけもとしょう さんにメタバースのあれこれを語っていただく本連載。
今回はクリエイター目線の いけもと さんに、ワクワクするメタバース空間をテーマに語って頂きます。
いけもとしょう

クリエイター/ディレクター

最愛の娘へ贈る「おばけの世界」を「絵本」や「メタバース」に創っている人。創造を続けている目的は『100年残るIPとしておばけのパッチを新たな文化にし、子どもにおもしろい未来を贈る』。

note|https://note.com/ikemotodir

どうも、メタバースクリエイター&ディレクターの「いけもとしょう」と申します。今回は『ユーザーはどんなメタバースの空間ならワクワクするだろう』という疑問について、1人のメタバースクリエイターが感じたことを書いていきます。

割と私の主観的で具体的な話だと思うので、他のクリエイター・ディレクター・プロデューサーが、それぞれ違った考えをお持ちだということはご理解ください。

「ストレス→解放感」の設計

突然ですが、ディズニーランドに入場するときのことを思い出してみてほしいです。

「いや、入場ゲート増やしてよ」と何度思ったことか。

あとは「バケモノの子」とか「千と千尋の神隠し」とかのアニメーション映画で、細い裏路地や暗くて狭いトンネルを抜けた先に――

広がる大きな世界!……みたいな感じ。

この「ストレス感じたからこそ、解放感が大きいわ~!」をメタバースでも設計した方がいいよねというお話です。

上の例はそのまま使えると思っていて……

ワールドにポーン(空間にアバターが降り立つこと)する場所は、鉄パイプから蒸気がモクモクと漏れだす、薄暗い路地。

だけど道なりにまっすぐ進むと、なにやら光が見える。

「何かあるのかな」と進んでいくと……。

そこには上へ下へと鉄の塊やパイプが張り巡らされ、眩いネオンの光が輝き、見上げるほどの建物が立ち並ぶスチームパンクな世界だった―――。

みたいな!

こういう設計ってよくあると思うんですけど、意外とメタバースではお目にかからないんです。

それにこういった「ストレス→解放感」の空間設計は、現代だからこそやった方がいいんですよ。

なぜかというと、ユーザーはその空間の映像を撮影したいから。

「最初はストレスのかかる空間から解放的な空間へ!」という一連の流れは、短く、かつ非常に美しい映像になりうるのです。

ユーザーを巻き込みつつ、拡散力を得るためにも、この空間設計はあった方がいいなって思います。

「生命や動き」を創りだす

少なくとも現代において、バーチャルの空間に生命は存在しない。

これは誰もが認める事実です。

だけどね。

どれだけ美しい建築物やキレイなライティングの施された空間を創ろうが、そこに「生命や動き」を感じられなければ、ユーザーは一瞬で空間に飽きます。

「1」で書いたスチームパンクな世界を例に出すと、パイプから蒸気がモクモクと出ている様子とか。

あとは地べたを定期的にネズミが走るとか。

街の遠くの方で電車が走ってるとか。

こういった「動」を感じるものがなければ、空間は生きていないも同然だと思います。

これは感覚的な話ではなく、ユーザー目線に立っても言える話ですよ。

現代のメタバース空間というのは、常にだれかがいるわけではありません。

そういう空間もあるかも知れませんが、時間や訪れるユーザーはかなり限定的です。

となると、ふらりとユーザーが空間に訪れた時、その空間は誰もいない可能性が高いです。

静かなのです。

そんな中、自分以外何も動いてない、動く気配もない空間は……。

楽しいのかな。

皆さんはどう思いますか?

「この空間から何か始まる」感の演出

これは「メタバースの空間」に限定した話ではなく、「メタバースを利用するブランドや企業のストーリー性」の話なのですが。

「メタバースの空間」を、「メタバースの空間」だけで終えてほしくないのですよ。

創っておしまいではないはずなのです。

メタバースを通じて、その企業の、ブランドの次の展開を見せてほしいといいますか。

たとえ話が私事になり申し訳ないのですが、私は今メタバース”The Sandbox”に「おばけの街」を創っています。

そもそも私が描いて出版した絵本「おばけのパッチ」というものがあり、そこに登場する街をメタバースに創っているのですが……。

じゃあこの「おばけの街」って「メタバースに街創りました!」で終わるのかというと全然そんなことないのです。

結局このメタバースに創っている「おばけの街」は設定資料なのですよ。

つまりここで立体的に、3Dで街を創ることによって、IP(知的財産)としての設定の深堀をしていたり、次の展開であるアニメーションなどにも持っていきやすくなるのです。

街をメタバースに創れていたら、アニメーション化するときの映像の画角に入る背景は、キャラクターの立ち位置だけで決められるようになるので。

結論が最後になり申し訳ないのですが……。

つまり何が言いたいのかというと「メタバースはあくまで手法の1つなので、それを通して次のワクワクを匂わせてほしい」し、その匂わせにメタバースはめちゃくちゃ使えるなと、実践している身からすると思っています。

今回はかなり具体的なお話ばかりだったのですが、クリエイターやアーティストだけでなく企業様が空間を創る時も、こういったことを意識しながら創るのと、意識しないのでは、多少なりともユーザーの満足度に違いが出てくるのかなと思いました。

まぁここにあげたことはほんの一部ですし、あくまで ”いちクリエイターの意見” です。

ご参考くらいになれば幸いでございます。

では。