メタバースクリエイター&ディレクターの いけもとしょう さんにメタバースのあれこれを語っていただく本連載。
いけもと さんは日ごろテレビ業界の人としても活躍しています。
テレビマンだからこその視点で、今回はメタバースを語って頂きました。
クリエイター/ディレクター
最愛の娘へ贈る「おばけの世界」を「絵本」や「メタバース」に創っている人。創造を続けている目的は『100年残るIPとしておばけのパッチを新たな文化にし、子どもにおもしろい未来を贈る』。
どうも、メタバースクリエイター&ディレクターの「いけもとしょう」と申します。今回は『テレビ業界の人と話して気づいたメタバースの使い方』をお話させて頂きます。
2022年1月、日本テレビ「マツコ会議」という番組に出演させて頂きました。
もちろんメタバースクリエイターとしてです。
ことの発端は、The SandboxについてYouTubeに動画をアップしたことがきっかけです。当初は自分が創ったワールドを公開できなかったため、せっかく作っても、人に見せるすべがありませんでした。
そこで、自作ワールドを自分で解説した動画をアップしていたのです。
それを見たテレビ局の人がメールでご連絡くださり、出演に至りました。
コロナ禍真っ最中の当時、オンラインで何度もやり取りをして、収録のために、スタッフさんがわざわざ東京から愛知まで来てくれて、無事OAされました。
(引用:Tver)
ちなみに、同局の「カズレーザーと学ぶ。」という番組にも出演させて頂きましたよ。
普段テレビ番組を作る側の人間なので、出演とはなんとも不思議な感覚でしたが……。
テレビ局のディレクターさんや演出にとって、やはり気になるのが『何がいくらになった』というお金の話。
例えば「9万円で買ったメタバースの土地が、今の相場で150万円だよ~」とかです。
テレビ局の性質上、視聴率を取らないと広告主様が離れてしまうので、一般市民が大好きなお金の話、いくら稼いだかのお話、いくら稼げるのかのお話を積極的に取り入れているのがよく分かります。
あとは「マツコ会議」という番組の特性かもしれませんが、「メタバースの土地を買う」という感覚は制作陣の方々も理解できなかったようです。
結局メディアの王様として長く君臨していたテレビからすると、メタバースというものは「”テレビ番組”の視聴率を稼ぐにはいいコンテンツ」という感じなのかな、と少し寂しく思いました。
結局これまで、The Sandboxに参入している日本のテレビ局を私は見かけたことがありませんから。
私としてはテレビ局が、「メタバース」を「テレビの視聴率を稼ぐための1つのテーマ」だけにしてしまうのは非常にもったいないなと感じています。
もちろんメタバースに参入しているテレビ局も存在します。
その多くは、どこかのプラットフォームを使い自社空間を創って、そこで就職説明会や番組連動企画をしている……という、正直現状は、さほど差別化できるものではないのかもしれません。
私の考えではテレビ局なら『スタジオセットをメタバースに創って色々な人に貸し出したり売ったりする』というアイデアが浮かびます。
例えばテレビ朝日「アメトーーク!」のスタジオセット空間を創って貸し出せば、番組の予算も増やせるし、新しい層のファンも獲得できるし。
おおもとの番組自体でも、何か新しい企画ができるかもしれないし。
これは「スタジオ」に「認知度」と「ブランド」がついているテレビ局こそできることじゃないですかね、と思いました。
もし「アメトーーク!」のスタジオセットについては、色々な権利などの問題でこの事業を展開できないのであれば、この方法を知ったうえ、権利関係をしっかりと抑えといて、次の番組のスタジオセットを作ればいいですし。
日本国内のVTuber人口は20000人と言われており、また「ホロライブ」などのVTuberグループが今後増えていく可能性を考えると、この市場には可能性があると思います。
(引用:hololive ホロライブ - VTuber Group )
YouTubeやメタバースなど、様々なコンテンツは増えていますが、日本の現状ですと「テレビを見てる人は多い」ですし、「テレビに自分が出れることは嬉しい」わけですよ。私も出れてめっちゃ嬉しかったです……。
であればその心理と、テレビ局の強みと、メタバースをかけ合わせれば面白いことになりそうだな……なんて思いました。
テレビ局のスタジオは1つのわかりやすい例でしたが、このように「訪れた人が主役に”なれる”メタバース空間」には可能性を感じています。
なんせ世の中、「主役を”見せる”作品」ばかりです。
こういった作品が増えすぎたため(誰でも創造をすることが可能になってしまった時代ならではだが)、「自分が主役に”なれる”」場所に需要が集まっているのです。画像とか動画を撮って、SNS共有したいしね。誰もが主役になりたいんですよ。そう考えると「訪れた人が主役に”なれる”メタバース空間」というのがいくつか想像できます。
■例1■
実写・アニメーション問わず、「映画」の世界をメタバースに落とし込むのはどうでしょうか。
PIXARの「モンスターズインク」の世界に入れるとしたら?
「ハリーポッター」のホグワーツ魔法学校の中に入れるとしたら?
誰もが見たことのある場所に、自分が主人公として入れちゃうなんて素敵だと思いませんか?
私は「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」「不思議の国のアリス」あたりの世界がメタバースにできたらすぐ行くと思います。
これがシンプルに、この映画たちの「世界観を愛すファン心理」だと思います。
ちなみに「自分が主役に”なれる”」を現実世界に創ったのがテーマパークですよね。
(引用:写真AC)
■例2■
あとは「漫画」の世界なんかもいいですよね。
元々が3Dではなく2Dなところに、メタバースの空間にする意味がガッツリ乗っかるのでファンは歓喜です。
この3Dと2Dの差を活かすのであれば、ゲーム化された漫画は、あまりありがたみを感じないかもしれませんね。
ゲームはすでに「主役に”なれる”コンテンツ」なので。
■例3■
こういったIPのほかにも、「歴史的建造物のある世界遺産」ののメタバースは素敵だと思います。
「サグラダ・ファミリア」とか「タージマハル」の前に来たら、万人が自分込みの写真とか動画を撮るでしょ?
あれはSNSの普及した現代だと、「自分ここに来たよ!」という「自分が主役に”なった”コンテンツ」の共有に使われるわけですから。
こういった感じで「主役を”見せる”」コンテンツではなく、「主役に”なれる”」コンテンツを持っているIP(知的財産)ホルダーや自治体などは、かなりメタバースを活かせる立ち位置にいると思います。
ちなみにテレビ局のスタジオだと、「VTuberさんなどにメタバーススタジオを貸し出す」という点で”マネタイズ”ができるかもしれませんが、映画や漫画などのIP系は、メタバースの空間で直接マネタイズを図るというより、「メタバースを使った実験&データ作り」に目的を置いた方がいいかもしれません。
「3Dでありゲームとは少し違うメタバースに、ウチのIPのファンたちはどれくらいが反応を示し、どんなリアクションをするのか」というデータや、「20年前に人気だった漫画に、改めて現代の若者のファンを付けよう」という目的など……。
「メタバース空間の着地点」をどこに持ってくるかも設定したうえで、実験したいものですね。
実をいうと、私が絵本「おばけのパッチ」に描き、今The Sandboxに創っている「おばけの街」という存在は、絵本を描く前の設定を決める段階の最初期からガッツリ創りこむことを決めていました。
幾つか理由があるのですが、その内の1つが「訪れた人が主役に”なれる”場所を持っておきたいから」です。
だからなのか、それとも私が映像制作のディレクターだからなのか、は分かりませんが……。
メタバースに「おばけの街」を創りながら常に意識をしているのは、「街のこの部分は、この画角から撮るとカッコよく美しく素敵に映る」ということです。
では。