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2024.01.18

カシオ、NFTでG-SHOCKを販売|リアルなアイテムとNFTの関連について解説

耐衝撃ウオッチ「G-SHOCK」で知られるカシオ計算機が、2023年12月に2,000点の限定NFTを販売しました。 今回販売された「VIRTUAL G-SHOCK NFT」は、2023年に40周年を迎えたG-SHOCKの新たな挑戦であり、トレンドに敏感でデジタルリテラシーも高い若年層を中心に人気を集めています。一方で、G-SHOCKのような「現実世界にリアルに存在するアイテム」とNFTのようなデジタル技術がなぜ結びつくのか、疑問に思う方もいるでしょう。

この記事では、リアルな商品やサービスを取扱うビジネスにおいてNFTなどのweb3関連技術がどのように用いられているのか、最新の状況をわかりやすく解説します。

プロジェクト概要

「VIRTUAL G-SHOCK NFT」は、1983年のデビューから根強い人気を誇るカシオ計算機の耐衝撃ウオッチ「G-SHOCK」の未来の耐衝撃構造をバーチャル空間で表現したNFTです。2023年12月16日に販売が開始され、本記事執筆時点の27日現在ではすでに完売しています。NFTはイーサリアムチェーンで発行され、1点あたり0.1ETH(販売時点で約3万2,000円)で限定2,000個が販売されました。

2021年頃から、カシオのG-SHOCKと同じように「人々が身につけるリアルなファッションアイテム」を手掛けるブランドが次々とweb3に参入しています。アディダスはメタバース展開を視野に入れたNFTコレクション「Into The Metaverse」を2021年12月に発表、そしてナイキは、メタバースで着用可能なバーチャルスニーカーを2022年4月に発売しています。このように、NFTはweb3を代表するデジタル技術ですが、その活用範囲はデジタルの世界に留まるものではありません。

ここからは、リアルな製品やサービスを扱う企業がなぜ自社のビジネスにNFTを活用し始めているのか、その目的や効果について解説します。

(引用:CASIO G-SHOCK YouTubeチャンネル)

NFTを活用する目的

リアルなビジネスにNFTを活用する目的には、大きく以下の3つがあります。

●メタバース内アイテムとしての利用

●コミュニティ作りへの活用

●NFT保有者へのマーケティング

デジタルデータとしてのNFTが持つ特性についても触れながら、これら3つについて解説します。

メタバース内アイテムとしての利用

目的の1つめは、メタバース内でNFTをデジタルアイテムとして利用することです。

メタバース=仮想空間の技術は、すでにオンラインゲームなどを中心に活用が進んでいます。今後、メタバースは私たちの日常生活により深く入り込んできます。その結果、私たちの仕事や学校生活の一部はメタバース内で行われるようになると考えられています。

具体的にはZoomなどを用いて実施しているオンライン会議や、同じくオンラインで画面越しに受講しているセミナーなどが、今後はメタバースで行われることが想定されます。

メタバースの中で、私たちは「アバター」と呼ばれる自分の分身を操作します。そしてNFTは、メタバースにおける「アバターのファッションアイテム」のような形で活用が進むと見込まれています。つまり、カシオやナイキ、アディダスが発行しているファッション性の高いNFTは、メタバースの中でアバターが実際に身につける時計や靴として機能することになります。ファッションアイテム以外にも、メタバースの空間内に「NFTアート」が飾られたり、アバターが身につけたヘッドホンから「音楽NFT」の楽曲が流れたりするなど、メタバースでのNFTの活用方法には様々なものがあります。

コミュニティ作りへの活用

目的の2つめは、コニュニティ作りへの活用です。

NFTは、デジタルデータであるにもかかわらず「個数が有限」という状態を作ることができます。個数が有限のNFTに対してわざわざお金を支払って購入するユーザーは、そのNFTおよび関連する商品やサービスのコアなファンである可能性が高いと言えるでしょう。

カシオの例であれば、「VIRTUAL G-SHOCK NFT」を実際に購入したユーザーの多くは、そもそも「G-SHOCKの熱烈なファン」である人がかなりの割合を占めるはずです。そして、このような熱量のあるファンと共にコミュニティを作っていけることが、リアルなビジネスにNFTを活用することのメリットでもあります。実際に、カシオも「VIRTUAL G-SHOCK NFT」のプロジェクトを通じてZ世代を含む新たなユーザー層と繋がりを作り、ユーザー参加型のコミュニティを形成していくことを考えていると述べています。

 (引用:写真AC

NFT保有者へのマーケティング

目的の3つめは、NFT保有者に対するマーケティングツールとしての活用です。

過去に配布・販売したNFTを保有しているユーザーは、自社の商品やサービスに興味がある、あるいは少なくとも何らかの接点を持ったことがあるユーザーだと言えます。 

例えばカシオは、「VIRTUAL G-SHOCK NFT」を販売する前に「G-SHOCK CREATOR PASS」という無料のNFTを個数限定で配布しています。このPASSはDiscordの専用コミュニティへのアクセス権としても機能しています。つまり、高い確率で「このカシオの取組みに興味があるユーザー」だと言えるでしょう。

そしてカシオは、「PASSの保有者」=「G-SHOCK自体にも興味がある可能性が高いユーザー」と見なし、彼らを対象に後からマーケティングを仕掛けることが可能になります。例えば、NFT保有者だけを対象に希少なG-SHOCKの優先購入券を提供したり、イベントの招待券を付与したりする動きが考えられます。そして、特にNFTが優れているのは、NFT保有者に関する情報がブロックチェーンに刻まれて半永久的に残り続ける(=いつでも利用できる)点です。

「NFTの持ち主は誰か」「いつ、どのイベントをきっかけにNFTを手にしたのか」「または他者から譲り受けたのか」などの情報がブロックチェーン上に残り、しかもそれは勝手に改ざんされたり削除されたりすることもありません。

非常に信頼性の高い顧客情報として、長期間に渡りマーケティングに有効活用できます。

NFTで可視化されるファンの熱量

ここからは、NFTをビジネスに活用する時に押さえておきたいポイントについて考察します。

上記の「コミュニティ作り」と「マーケティング」の事例に着目すると、NFTは「ファンの熱量を可視化できるツール」だと位置づけることができます。「VIRTUAL G-SHOCK NFT」 の購入者は、3万円ものお金を払ってNFTを買っていることから、カシオやG-SHOCKの「コアなファン」である可能性が高いと言えます。つまり、カシオとしても「一緒にコミュニティを作っていける熱量を持った仲間」だと捉えることができるでしょう。

一方、無料配布された「G-SHOCK CREATOR PASS」だけを手にしているユーザーは「G-SHOCKやそのNFTに興味はあるが、必ずしもコアなファンとは言えない」可能性があります。つまり、コアなファンに比べると熱量が薄いこれらのユーザーは、「コミュニティを一緒に形成していく仲間とは言えないものの、今後より濃いファンになってくれる可能性がある人」だと捉えることができます。言い換えれば、これから様々な手法でマーケティングを仕掛けていく対象の人たちであるとも言えます。

(引用:写真AC

このように、NFTは自社の製品やサービスに対する個々のユーザーの熱量をあぶり出すツールとして機能します。

NFTを導入することでユーザーの熱量の違いが見えてきたら、その後は熱量の違いによって「共にコミュニティを作る仲間」として巻き込んでいく、あるいは「より濃いファンになってもらうための策を打つ」というように、それぞれ異なるアプローチが必要になってきます。

リアルとのつながりはより多様に

本記事では、デジタルデータであるNFTがどのように現実のビジネスと結びついていくのかについて、特にNFTを活用する目的を中心に解説しました。アートやゲームだけではなく、ビジネスにおいてもNFTは十分に活用できる技術です。特にメタバースにおいては、暗号資産とNFTを組み合わせることで「バーチャル世界における経済圏の形成」などにもつながっていく可能性があります。今後はNFTの技術自体にもイノベーションが起こることで、今のNFTでは不可能な使われ方が実現するかもしれません。