2022年7月に総務省が公開した「令和4年版 情報通信白書」では、メタバースを「インターネット上の仮想空間」と説明しています。とはいえ現状ではメタバースには明確な定義はありません。
言い換えれば、今後の展開次第で概念が変わる余地が残されている分野ということですが、現時点では一般的に「インターネット上の3D仮想空間で現実と同じような社会活動を行う仕組み」を指すことが多いです。つまり、仮想空間そのものだけでなく、そこに付随する様々なサービスも含めてメタバースと呼ばれています。
さて、「3Dの仮想空間を利用した仕組み」というと3Dゲームを連想する読者が多いかもしれません。しかし、単なるゲームとメタバースの間には確固とした違いがあります。それが社会活動を行えるかどうかという点です。
メタバースでは、仮想空間で他の人と交流をしたり、商品を購入したりできることがポイントで、実際にそのようなことを実現するサービスが続々と生まれています。
ゲームとメタバースは違いがあるとはいえ、相性は良く、それぞれを掛け合わせたタイトルは数多くあります。メタバースを作る際にはゲームエンジンを使う事もありますし、アバターを介したユーザー同士の交流という点では共通しています。その上で、仮想通貨などを活用しながら多様な活動が行えるのがメタバースの特徴で、従来のゲームと大きく異なる点です。
もちろん、メタバース関連のサービスはゲームにとどまりません。エンターテインメントやビジネス、教育、小売など様々な領域での活用が広がりつつあります。
なお、よくメタバースとセットで語られるのが、「VR(Virtual Reality:仮想現実)」「ブロックチェーン」「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」という言葉です。
それぞれの言葉の意味は別の記事で紹介する予定ですので、ここで詳細な説明をすることは避けますが、一言でいえば、これらはメタバースを構成する技術のひとつです。例えば、VRはヘッドマウントディスプレイやコントローラーなどを使って、仮想空間を体験する技術のことをいいます。
2023年度は前年度比207.0%の見込!
今後の伸びが期待されるメタバース関連市場
メタバースの魅力は、仮想空間の強みを生かして現実では不可能な表現やサービスの提供ができることです。関連技術の発展により、ユーザーにリアルな感覚を伝えられるようになった結果、現実を超えるような新たな体験を味わうことも可能になりました。その一方で、新たなビジネスや価値の創出が期待できるとあって、サービスを提供する企業の参入が活発化しています。
2023年8月、株式会社矢野経済研究所が発表した「メタバースの国内市場動向調査(2023年)」では「2022年度の国内メタバース市場規模は、前年度比173.6%の1,377億円で、2023年度は同207.0%の2,851億円まで成長する見込み」という結果が出ているようです。今後も、同市場規模の拡大傾向が見込まれています。※
関連技術の進化で環境が整ってきたことや、先に挙げたようなメリットが企業側にあることを考えると、メタバースやデジタル技術に知見を有する特定の企業に限らず、一般企業からの参入が増えることが予想されます。
注1.市場規模は、メタバースプラットフォーム、プラットフォーム以外(コンテンツ、インフラ等)、メタバースサービスで利用されるXR(VR/AR/MR) 機器の合算値。プラットフォームとプラットフォーム以外は事業者売上高ベース、XR機器は販売価格ベースで算出している。 注2.エンタープライズ(法人向け)メタバースとコンシューマー向けメタバースを対象とし、ゲーム専業のメタバースサービスを対象外とする。