鹿児島県の北西に位置する薩摩川内市。風光明媚な自然と黒潮で育った豊かな海の幸で知られるこの土地では、ここ数年、NFTアートを返礼品としたふるさと納税の実施や、リアルとデジタルを融合させたハロウィンイベントの開催など、最新技術を活用した取り組みが立て続けに行われている。同プロジェクトを仕掛けているのが、クリエイティブコミュニティ「カバードピープル」だ。NFTアートを契機に、独自の世界観でコミュニティを拡大させてきた代表のヒオキンこと日置順博氏に、コミュニティの歩みや目指す姿を聞いた。Web3時代のコミュニティのあり方とは!?
「2000年代中頃、Web2.0の流行を背景にインターネットビジネスが盛り上がった際、僕は単なるユーザーとして熱狂の様子をただ横目で見ているだけの存在でした。Web3が発展すれば大きなビジネスチャンスが生まれると思いますが、今回はその波に乗りたいという気持ちがありました」
Web3の領域で取り組みを進める理由を問われ、カバードピープル代表を務める日置泰博氏はこのように答える。
カバードピープルは、Web3を基点に約1,000人が所属するクリエイティブコミュニティ。「くだらないことにこそ価値がある」をモットーに、独特の世界観とアートを武器にした活動を通じて、数100年後も繁栄し続ける経済圏を伴った生活圏を構築することをビジョンに掲げている。
日置氏は、採用広報にまつわる各種クリエイティブの制作を行う株式会社AJITOの代表としても顔もある。もともとカバードピープルの活動は「完全に個人的な興味から始まった」と振り返る。
「2021年頃、小学生のNFT作家『ゾンビ・ズー・キーパー』のNFTアートが高値で取引されたことが大きな話題になりましたが、そんなニュースを見て、自分も同じようなことができるのではないかと考えたことがそもそものきっかけです。それで、絵を描き、NFTアートとして売り始めた。すると、それまで絵を描いていたわけでもなく、ノリで描き始めたので、まったくくだらない絵なんですが、これを面白がって買ってくれる人がいたわけです。もし、そんな“くだらなさ”に、価値を感じてくれる人たちが集まったら、何か面白いことができるのではないか? そんな気持ちで作品を購入してくれた人同士が交流できるコミュニティを立ち上げたのです」
コミュニティはDiscord(ディスコード)を利用して形成されており、原則カバードピープルのNFTアートを購入した人たちがメンバーになる仕組みだ。Discordでは、新たなアイデアやイベントのための活発な議論が日々行われ、熱量も高い。
Web3の波に乗りたいと考えている日置氏だが、カバードピープルの運営活動自体で収益を得ることはあまり考えていないという。
「カバードピープルは、あくまで共通の価値観をもつ人たちが集まる場。そこにいる人たちにやりたいことがあるのならば、自由にコミュニティのリソースを活用して実現してくださいというスタンスで運営しています。仮に運営で利益が出なくても、コミュニティ内で事業が生まれればよいと考えています。そのような動きをする人が増えていけば、カバードピープルのビジョンである強い経済圏を築けると思うので――」と日置氏は、人懐っこい笑みを浮かべながら熱っぽく語る。