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2024.02.15

地域密着型NFTマーケットプレイスとは|web3がもたらす「地方の関係人口創出」

2023年12月にオープンした「NiiFT(ニイフト)」 は、「にいがた×NFT」をテーマにした新潟県の地域密着型NFTマーケットプレイスです。

(引用:株式会社NIZAプレスリリース

昨今、NFTを活用した取り組みの中には、地方創生や産業振興を目的としたものが目立つようになりました。NiiFTもそのうちの1つだと言えます。

NFTをはじめとするweb3の技術を活用した地方創生の取り組みには、様々な形態があります。その中でNiiFTのような取り組みは、「関係人口の創出」という観点から地方創生に貢献するものだと言えるでしょう。

この記事では、NiiFTの概要と「関係人口」の基本事項について説明した上で、NiiFTのような取り組みが地方創生にどのように貢献するのかについて考察します。

プロジェクトの概要

NiiFTは、新潟県の地域密着型NFTマーケットプレイスです。新潟県にゆかりのある特産品やキャラクターを採用しており、暗号資産ウォレットを接続することで誰でも購入できるようになっています。

NiiFTで販売されているNFTには、「NiiFT版NFT」と「ふるさと納税版NFT」の2種類があります。

「NiiFT版NFT」は、一般的なNFTマーケットプレイスにおけるNFTとおおむね似たような取り扱いになっています。しかし、以下のような相違点もあります。

●暗号資産ではなくクレジットカードで購入する

●メタマスクはNFTの受け取りのために使用する

NiiFTでは、暗号資産の取り扱いに慣れていない人でもクレジットカードで簡単にNFTが購入できます。しかし、暗号資産ウォレットのメタマスク自体はNFTの受け取りに必要なため、注意が必要です。

「ふるさと納税版NFT」は、ふるさと納税サイトの「ふるさとチョイス」で寄付を行い、その返礼品として受け取ることができるNFTです。

こちらも、NFTの受け取りにはメタマスクが必要なので注意してください。

NFTを活用する意義

NFTを活用した地方創生の取り組みには様々な種類があります。

その中で、NiiFTのように地域の特産品やキャラクターを絡めたデザインのNFT販売、あるいはふるさと納税NFTのようなスキームは、「関係人口の創出」という点で意義があると言えます。

関係人口とは

関係人口とは、その土地に住んでいる「定住人口」ではなく、観光などで訪れた「交流人口」でもない、それ以外の多様な形で地域と関わる人々のことを指します。

定住人口、交流人口、関係人口の具体例には、以下のようなものが挙げられます。

●定住人口:地域に居住する人、移住してくる人

●交流人口:観光、レジャー、通勤通学などの「目的」を持って地域を訪れる人

●関係人口:その地域にルーツがある人や、地域への愛着や想いを持つ人

関係人口についてより具体的な例を述べると、「生まれが北海道、現在の居住地が東京」というAさんの場合、Aさんは「北海道の関係人口」「東京の定住人口」に該当します。

出身地だけではなく、大学生活を過ごした地域や、転勤で数年間だけ居住した地域なども、関係人口の関係性に当てはまると言えます。

また、関係人口は必ずしも「その土地を実際に訪れたことがある」という経験は必要ありません。

たとえば、東京に住みながら、なんらかの理由で沖縄の文化に強く興味を持ち、ふるさと納税では毎年沖縄に寄付をしているというような人は、沖縄県の関係人口に当てはまると言えます。

関係人口を増やすことの意味

関係人口を増やすことは、特に「地方」と呼ばれる地域において重要な意味があります。少子高齢化を迎えている日本において、特に人口の減少が目立ち、高齢化率も高いのは都市部ではなく地方です。

ここで言う「人口」は、定住人口のことを指します。定住人口の減少によって地域の経済や社会システムは徐々に弱まり、場合によっては人々が普通の生活を営むことができない地域になる可能性さえあります。

さらに問題なのは、これらの地域が今から「定住人口」を増やすことは非常に困難であるという点です。日本全体の人口が減っている中で、特に若い世代が都市部から地方に積極的に移住することは、(部分的には起こりうるものの)大勢を占める動きにはなりにくいと考えられます。

そこで、現在多くの地域が活路を見出しているのが「関係人口」の増加です。該当する人々は、その地域に対して何らかの思い入れがあるケースが多く、「自分もその地域に貢献したい」と思っている人が数多くいます。

その人たちの数を積極的に増やし、地域を盛り上げる活動に参加してもらうことで地方創生につなげようというのが、多くの地方自治体、あるいは地方のコミュニティの狙いです。

(引用:写真AC

NiiFTの意義

そして、NiiFTのようにNFTを絡めた取り組みは、以下の観点で関係人口の増加、および地方創生に貢献すると考えられます。

●若い世代の取り込み

●特にITリテラシーが高い層の取り込み

●地域創生活動への能動的な貢献

関係人口の利点は、本来であれば定住人口になりにくい若い世代も地域に関わるようになる点です。特にNFTを絡めた取り組みであれば、ITなどのリテラシーが極めて高い人材も関わってくくれる可能性があります。

さらに、このように関係人口として関わってくれる人材は、「地域のために何かしたい」と考えているケースが多いことから、自ら能動的に地域創生の活動に参加してくれることがあります。

NiiFTと同じ新潟県の取り組みに、限界集落の山古志地区から起こった「山古志DAO」 の取り組みがあります。メタバース内に山古志村を作る「仮想山古志村」というもの。そして、この制作に携わったのは山古志の「デジタル村民」、つまり関係人口に該当する若い世代です。

「仮想山古志村」の制作においては、関係人口として山古志の活動に参加する人々が、普段の自分の仕事で用いている3Dモデリングやアバター制作などの技術を活かして能動的にメタバース作りに参加するという動きが見られました。

一般的に、メタバースの制作を外部の企業に発注すると数千万円 の費用がかかることもあります。しかし、関係人口の人々はそもそも「地域のために何かしたい」という発想があるため、地域創生の具体的な活動を依頼する際にも費用を安く済ませられる可能性があります。

もちろん、これは企業におけるブラック労働とは異なり、「その活動に参加するかどうか」は関係人口側の人が自ら判断しています。「参加したくなければ参加しない」という選択肢はあるということです。

一見すると、安く働かせられているように見えるかもしれませんが、一方で本記事を読んでいる読者の方も、「自分が愛着を持っている地域のためなら無償でも貢献したい」と思う人々の気持ちは、理解できるのではないでしょうか。 

NFTはファン作りにもつながる

本記事では「NiiFT」を事例として、NFTを活用した取り組みがどのように地方創生に貢献するかについて考察しました。

地方創生という言葉から、あくまで本記事の内容は「都市部ではない地方」にのみ該当するものと思われるかもしれません。しかし、「自らの活動にゆるく関わってくれる人の創出」という観点で見れば、地方創生活動だけではなく、一般のビジネスにもNiiFTのような取り組みを応用できる可能性はあります。

いわば、「自社の商品やサービスに愛着を持ってくれるファン」を獲得するために、NFTなどの技術は活用できるはずです。

ぜひ本記事の内容を参考に、web3技術を活用して関係人口の創出に取り組む他の事例を学び、ご自身のビジネスへの適用方法について考えてみてください。