2021年、NFTやDAOなどと共に「バズワード」として知られるようになったメタバース。「メタバース=3次元のバーチャル空間」という認識をお持ちの方も、今では決して少なくないでしょう。
一方で、2024年2月現在においても、仕事・プライベートを問わず「日常的にメタバースを利用している」という人はかなり少数派なのではないでしょうか。メタバースの普及が進まない要因の1つに、ユーザー側がメタバースの本質や必要性を理解できていないということが考えられます。
この記事では、メタバースを作る人、メタバースを使う人の双方が理解しておくべきメタバースの本質について、「デジタルアイデンティティの再取得」という観点に着目して考察・解説します。
2024年2月時点において、メタバースの普及が進まない原因の1つに、「メタバースの本質的な役割や必要性を人々が理解できていない」というものが挙げられます。そしてこのことが、メタバースに対する懐疑的な見方、つまり「メタバースって本当に普及するの?」という疑いの目線につながっています。この「懐疑的な目線」について、いくつか具体例を挙げてみましょう。例えば、「これから人々はメタバースの中で買い物をするようになる」という主張に対して、以下のように考える方もいるのではないでしょうか。
●ネットで買い物をするならAmazonで十分
●バーチャル空間で商品のサンプルを見ても参考にならない
●実物を見る必要があれば実店舗に行くし、その必要がなければ既存のネットショッピングで済ませるので、メタバースの存在意義がわからない
あるいは、「会議もメタバースで行うようになる」という主張には、以下のような反論が聞こえてきそうです。
●Zoomなどのサービスを使えば、今でも不自由なくオンライン会議は行える
●顔を出したくなければ既存のオンライン会議でも可能、わざわざアバターを用いて自分を隠す必要性を感じない
つまり、多くの人は「メタバースで買い物や会議は確かにできるけど、わざわざそれを使う必要性はないのではないか?」と思っているようです。このような意見は、現時点におけるメタバースの機能・性能を考慮すると、間違っているとは言えません。しかし「仮想空間でコミュニケーションが取れる」といった機能の一部分だけを見ていると、メタバースのメリットを見失いがちです。実は、「デジタルアイデンティティの再取得」を通して、従来のコミュニケーションにおける問題点「無意識のバイアス(先入観)」を克服できるという利点があります。まず私たちはどんなバイアスを抱えているのか例をあげましょう。