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2024.03.14

【連載最終回】AIから宇宙事業まで!?メタバースが創造する未来とは

自らがクリエイターとしても、メタバースを実践するいけもとしょう さんの連載コラム最終回。

メタバースディレクターとしても活躍するいけもとさんが考える「メタバースが創造する未来」について、最終回で大いに語り尽くして頂きました。

いけもとしょう

クリエイター/ディレクター

最愛の娘へ贈る「おばけの世界」を「絵本」や「メタバース」に創っている人。創造を続けている目的は『100年残るIPとしておばけのパッチを新たな文化にし、子どもにおもしろい未来を贈る』。

note|https://note.com/ikemotodir

どうも、メタバースクリエイター&ディレクターの「いけもとしょう」と申します。今回は『メタバースが今後どんな世界を創っていくのか』というお話をさせて頂きます。

誰もが「世界」を創れるようになってしまった

1992年。私が生まれた年に海外で出版された、「スノウ・クラッシュ」という小説に登場し、「超越した=Meta(メタ)」と「宇宙=Universe(ユニバース)」の組み合わせで生まれた「メタバース」という言葉が生まれ、はや30年とちょっと。「メタバース」は未来の話ではなく、もはや誰もが創れてしまう概念になってしまった。なんてったって、私のようなただのパパクリエイターが「メタバース」に1つの世界を創りあげられるくらいだ。

「とっても高価な業務用コンピューター」がなくても、ノートPC1つで創れてしまうという世界が来てしまった。実際、今の「メタバース」と言われるワールドの多くは、ゲーム会社や大資本などではなく(もちろんそういったところも参入しているが)、一般の方が趣味とか創造性から生み出したワールドがほとんどだ。

VR Chatが特にいい例で、多くのクリエイターたちが創りたいように、表現したいように「メタバース」に世界を創りあげている。この事実を、皆さんがどう受け止めているかはわからないが、少なくとも私はこう思っている。

誰もが「世界」を創れるようになってしまった、と。

「世界観」という意味合いではなく、本当の意味で「世界」という意味だ。

(引用:写真AC

AI搭載デジタル生命から考える「シミュレーション仮説」

誰もが「世界」を創れるようになってしまったとはどういうことなのか。そのことを説明するには、「メタバース」と共に世界を席巻した「AI」について触れなければならない。

AI(人工知能)は私もガッツリ抑えている領域ではないが、ChatGPTやMidjourneyは一通り触った。さらにAIを使い色々な実験をしている人々が、何を創っているのかもちょこちょこ覗いている。見ている限り、AIが今後も指数関数的に進化していくことは安易に予想できるわけなのだが、私はこれが「メタバース」を「世界」たらしめるのではないかと考えている。そこである時ふと思ったのだ。

「メタバースの上に世界を創り、AIを搭載した人工生命をいくつか置いておけば、仮想空間の中に我々人間が観測可能な生命や文明を創りあげられるのではないか」

こういった考え方を「シミュレーテッド・リアリティ」というようなのだが、私はこれが今すぐにでもできてしまうと思っている。私は普段、おばけがたくさん登場する「おばけの街」をメタバースで創っており、その「おばけの街」にAIを搭載してキャラクターを設定したおばけを設置すれば、街や周辺環境は勝手に進化と衰退を繰り返していくのではないかと思っている。もちろんAIに組み込むアルゴリズムに「学習欲」「繁殖」「進化」「突然変異」「生死」などの概念を入れることが非常に難しいのは、素人ながら理解できる。

しかしこれができると何がいいのかというと、「人類を始めとした生命体がどのように歴史を歩んできたのか」などの秘密を紐解く手掛かりになるかもしれないし、世界に存在するいち生命体の歴史が、1つの大きなエンターテインメントとして成り立つ可能性があるのだ。これが私が「メタバースの空間を創るということは、世界を創ることだ」と述べている理由だ。

しかしここで、想像を働かせてみた。「では私たちが今いる世界も誰かが創った可能性があるのでは?」

要するに、私たち「地球という惑星」に暮らしているであろう人類が、「メタバース」と「AI」を掛け合わせ「世界」を創れるところまで来てしまったのと同じく、私たちが今暮らしている「世界」もまた、誰かが創ったという可能性があるのでは?実はこのアイデアは、15年前、私が高校1年生の時から持っていたもの。

この時は、映画「マトリックス」みたいな世界を想像し、「自分の頭に何か機械が埋め込まれていて、頭の中で繰り広げられている行為を誰かが見て楽しんでいたりするのかな」「俺がトイレをしているのもただ頭の中の妄想で、誰かが画面越しに見ているのかな」という考えだった。

しかし私が大人になって、「メタバース」にどっぷりつかるようになり、世界的に「AI」が広がったことで、より具体的で現実的にあり得るものとなってきたのだ。

この考え方はどうやら「シミュレーション仮説」というものらしく、昔から哲学者の間などで議論されている内容らしい。もし私たちが暮らしている「世界」が、私たちよりも高次な存在である誰かにとっての「メタバース」という可能性が0ではないのであれば。どうやら「メタバース」には、私たちが想像すらしていないおもしろい可能性が秘められているというお話だ。

「宇宙事業」はメタバースから

もちろんメタバースで「世界」を創るのもいいのだが、それだけだとまだ狭い。ちょっとだけ地球から引いて見てみると、「宇宙」がそこには広がっている。この「宇宙」に関しても、メタバースで可能性を広げられると思っている。まずは私がいま考えていること、進めていることからお話しよう。

夜空に輝く「月」。その土地の権利書が売られているのを皆さんはご存じだろうか。

「月の土地の権利書」が販売された当時(1980年ごろ)、宇宙条約によると(そもそもこんな条約があることを多くの人は知らない)、「月を国家が所有することは禁止する」という旨の文章が書かれているらしい。(※現在は「月協定」というものが存在しています。)

ここに目を付けたアメリカの人が「じゃあ個人や法人が所有するのはOKなんやな!」といい、「地球県外の不動産業」として「月の土地の権利書」の販売を始めたんだとか。

なんと驚きの低価格。サッカーコートに匹敵する広さの1エーカーが、税込み2,700円!固定資産税を支払う必要もないとのこと!

というわけでちょっとした贈り物として、全世界数百万人の方が月の土地を持っているらしい。かくいう私も、自分の父母や妻のお母様の誕生日、妻と娘へのホワイトデーの贈り物として月の土地を購入したことがある。

一応言っておくと、「実際に月の土地を手にしたのか」「この権利書は世界の法的にクリアな物なのか」という問題に関しては、世界中で様々な議論が行われたようです。「営利を目的とした宇宙、月、その他天体の開発・利用を禁じる」という月協定がいい例ですね。この月協定だけ見ると、「あれ、月の土地の売買っていいの…?」と思うかもしれませんが、この協定に署名をしている国はごく少数の国のみ。日本はこの協定には署名をしていません。(参考:Wikipedia

この「月の土地」を買う大きな理由は、シンプルに「ロマンティックだから」なのだと思っています。販売をしているルナエンバシーという会社もこう記しています。

「私たちにとって、月とは何でしょう?それは、希望やロマンス、達成、変化、それら全てのことのシンボルです。しかも、夜道を明るく照らしてくれさえします!愛する人にプレゼントするのに、月以上に、象徴的でロマンティックなものは、地球上に存在しません。」

で、せっかく「月の土地」があるのなら使いたいという話で。妻と娘に贈った「月の土地」を(所有名義も妻と娘の名前)、妻と娘に許可を撮り、開拓しようと企んでいるのだ。

さて困った。民間人が少しずつ宇宙に行けるようにはなっているものの、私がひょいっと月に行けるほど安くはない。でも何か開発を進めたい。どうしたものか……。

ここで「メタバース」だと私は考える。つまり購入した「月の土地」の広さに匹敵するメタバースの空間を再現し、そこを開発してしまおうというわけだ。私が妻と娘に贈った「月の土地」の広さは、だいたい60m×180m。私がふだん創っている「おばけの街」より狭い。うん、創れる。だからこそ私が2024年4月から設立する会社の事業内容にはっきりと「宇宙開発に関する事業」と記載した。もう定礎に記載した。

前の項目でお話した「生命が暮らす世界のシミュレーションをメタバースで」というお話にも通ずるのだが、「宇宙で行うことのシミュレーションをメタバースで」ということも大いにありうると思う。

「シミュレーションツール」としてのメタバースは、ものすごい価値と威力を発揮するようだ。

メタバースが生みだした価値観は「神の民主化」

ここまで書いた内容に私は自分で辿りついたのだが、私よりももっと早く、深く辿りついているのが、株式会社スペースデータの佐藤航陽さんなのだと思う。佐藤さんが2022年に出版した著書「世界2.0 メタバースの歩き方と創り方」の帯に大きく書かれていることこそが「メタバースとは神の民主化だ」なのだ。(「世界2.0 メタバースの歩き方と創り方 – 著・佐藤航陽」

これはやはりここまで話してきたことと繋がってくる気がしている。街も、世界も、文明も、歴史も、惑星も、宇宙も。全て「メタバース」で創れてしまう。宇宙を創ったのが「神」とやらなら、私たちは誰もが「神」とやらになれるというわけだ。ではもしかすると「宇宙」も複数個存在するのでは…?そんな妄想すら膨らんでしまう。

私自身メタバースに出会ってすぐのころ、「これでやっと自分の意識や存在を未来永劫残ることができるようになったな」と思ったことを記憶している。「いけもとしょう」という人間の思考、発言、行動の全てをAIに学習させれば、私が死んでも「いけもとしょう」が生き続けられると考えているのだ。

私がnoteというプラットフォームにビュー数を一切稼げず仕事に繋がらない「日々やっていること」「いま思っていること」をまとめているのは、この「AIに学習させる素材」を1つでも多く増やすためなのだ。こういった考えに至ったのも、娘が生まれたことにより「生と死」を間近に感じたことが大いに要因している。

これらの考え方や行動が、娘にとって必ずしもいい未来に繋がっているかはわからない。しかしはっきりと言えるのは、これら私の考えや行動が「娘の未来の選択肢や可能性を1つだけ増やしてくれる」ということだ。

「創造を通して子どもに新しい可能性とおもしろい未来を贈る」

この理念をぶらすことなく、今後もメタバースに色んな「世界」を創りあげていきたいと思う。

では。