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2024.06.14

VR法人 HIKKY CEOが激白 メタバースはオワコン、もうその議論は終わりにしませんか?

「オワコン? またその話ですか? メタバースの成功事例は着実に増えています。オワコン論争になるのは、本質を理解していないだけです」そう語るのは、世界最大級のVR(仮想現実)イベント「バーチャルマーケット」をはじめとしたメタバースサービスを提供するVR法人 HIKKY 代表取締役CEOの舟越 靖氏だ。

昨年末に開催された「バーチャルマーケット2023 Winter」には、120万人以上が来場。日本だけでなく、世界中のユーザーを集め話題となった。なぜ世間的に、メタバースがオワコンと言われてしまうのか。そこには大きな誤解があることを、メタバース進化の過程などから紐解いていただいた。我々MetaStep(メタステップ)編集部にとって、勇気をもらえるインタビューとなったが、はたして読者の皆様はどのように感じるだろうか。

VR法人 HIKKY 代表取締役CEO舟越靖

大手通信会社退職後、クリエイティブ分野へ進出。多くのクリエイターを組織化し、ハードウエアからアニメ・ゲームなど、様々なコンテンツ制作・開発を手掛ける会社を複数社立ち上げる。2018年、VR事業に特化した「VR法人 HIKKY」を設立。世界中から100万人以上が来場しギネス世界記録™を樹立した世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」を主催。2023年からはHIKKY独自のWebブラウザ上で動くメタバース開発エンジン「Vket Cloud」(詳細は探すコンテンツにて)を開発し、一般提供を開始。現在はメタバースソリューションの提供、メタバース参入コンサルティング等を展開している。

メタバースに停滞感が広がる理由とは

――「バーチャルマーケット」の来場者は年々増え続け、毎年、最高潮の盛り上がりを見せています。そのような成功を収める舟越さんの目には、メタバース界隈を取り巻く状況はどのように映っているのでしょうか?

 バーチャルマーケットは出展店舗数世界一のバーチャルイベントのギネス記録も持つ

メタバースの事業化に失敗する企業が増えているのは事実ですが、これはメタバース市場そのものに欠陥があるとは考えていません。

――では、なぜ停滞感や成長不安がぬぐえないのでしょうか?

メタバースに対するそもそもの『誤解』と、メディアがこれまで世の中に広めてきた『情報』、この2つに理由があると考えています。まず一つ目、メタバースに対する誤解ですが、多くの事業者はメタバースを「ビジネスありき」で捉えて、本質を理解できていないと考えています。

そもそもメタバースはクリエイターさんやコミュニティによって発展してきた文化です。数年前、僕が目にしたメタバースで創作するクリエイターの皆さんは、自身の知識を惜しげもなく公開しシェアしていました。オープンにすることで、結果的に技術や表現方法は驚異的なスピードで底上げされていったんです。

好きなことをするのはもちろんなのですが、仲間や界隈、全体の発展につなげていく発想に驚きましたし、何より日に日にすごい勢いで発展してく状況には本当に興奮を覚えました。まだビジネス要素が皆無だった頃、「こんなにも熱量が渦巻く中で何か生みだせない訳はない。この熱量が広がれば、さらに面白いものがたくさん生まれる」と確信しましたね。

その時から、今では第一線のプレイヤーとなった皆さんと、クリエイティブを損なうことなく、経済的な成果を得られる方法を模索してきました。メタバースを支える基盤は現在もそこにあり、こうした場所に最初からビジネス主軸で考えたアイデアや事情を持ち込んでもうまくいかないというのは、多くの方も感じ取っていただけるのではないでしょうか。

僕たちが主催している「バーチャルマーケット」の根本には、クリエイターさんやコミュニティが作る文化を応援するという思いがあります。つまり、絶対的なクリエイティブファーストが大前提。企業などにはその方針を理解していただき、企業側の要望だけを推し進めるのではなく、むしろ一緒にそのカルチャーを支援・共創することを前提にご一緒することがほとんどです。

――なるほど、ビジネス目線の分析で「クリエイターが集う場所を提供すれば、たくさんの人を集められる」と理解し、フレームワークだけを真似たとしても、クリエイターの気持ちを正しく理解し、環境を提供しなければ、思ったような結果が出ず、停滞感を味わってしまうということですね。

メタバースは、クリエイターさんとコミュニティがつくってきた文化だ、というところが正しく伝わっていないんです。そこを理解して、クリエイターさんと一緒に、人が夢中になるようなものをつくっていこうという感覚をもてば、ちゃんと面白いものができると思います。ビジネスシーンには、どうしてもその感覚が抜け落ちている印象がぬぐい切れません。

――メタバースにまつわる問題は、本質を見落としている周りにある。メタバース自体は、クリエイターのコミュニティによって、十分に発展や正常な進化を遂げているということでしょうか?

はい、そういうことだと思います。事実、我々が手掛けるメタバースは盛り上がっていますし、クリエイターさんの輪も広がり、リアルとも融合し、可能性がますます広がっています。オワコンどころか、むしろこれからが面白い。

 

二つ目の理由は、メディアによる情報の取り上げ方と、情報の受け手にも問題があると感じています。視聴率や閲覧数あって成り立つのがメディアですから、仕方のない部分もあると思うのですが、メディアで取り上げられるメタバース事例は、注目が集まりそうな企業や、出演者や企画が華やかなものばかりでした。

世間的にメタバースがブームと言われだした後も、取り上げられたのはブームをあおるかのような事例で、実際は中身が無いようなものも多かった。でもメディアにはあまり取り上げられなかったけれど、着実に成功した企業も実は山ほどあるんです。こういった企業はネームバリューや話題性はないかもしれませんが、メタバースの本質を理解している企業だと言えると思います。

情報の受け手にも問題があるのでは、とお伝えしたのは、情報が溢れ、AIも進化する便利な今、一次情報以外の情報だけで判断しがちな昨今の状況に危惧の念を抱いたからです。メタバースがバズワードになってからのこの数年間、皆さんはどれくらいメタバースの世界に入ってみましたか? VRの様々な機器に実際触れ、体感されましたか? クリエイターと話をしてみましたか? 

今もなお、メタバースの可能性を感じ、取組を続ける企業の多くは、自ら体験し、自ら創り、自ら感じ、一次情報の取得を積極的に行っているように思います。メタバースのビジネス活用の成否を分ける一つのポイントではないでしょうか。

クリエイターとユーザーそれぞれに表れている変化

――メタバース関連企業からは「メタバースの普及にはデバイスの進化が必要」というコメントをよく耳にします。この指摘について、舟越さんはどのようにお考えでしょうか?

もちろんそのような課題はあると思います。ただそのハードルは、コンテンツで乗り越えられると思っています。

ハードウエアの機能が限られていても、その中に面白いものがあれば、人は興味をもちます。例えば、任天堂は、ゲーム機器の機能自体が古くなっても、いまだに世界一売れるコンテンツを提供しています。決してゲームの機能と面白さや売れることが比例関係にあるわけではありません。

――実際、「バーチャルマーケット」にも数多くの人が集まっていますしね。

だからこそ、メタバース関連企業はもっとコンテンツやクリエイティブに目を向けるべきではないでしょうか。いや、今こそ向けて欲しい。

――近年、メタバースを舞台に活躍するクリエイターに変化を感じることはありますか?

クリエイターさんのマインドは変わっていないと思いますが、以前と比べて稼げるようになっているという変化はありますね。これまで副業やボランティアでやってきた人たちが、本業として活動したりするケースも増えています。専門学校にも、メタバースのクリエイティブを学べるコースなどができて、人気になっていますしね。

MetaStepの読者には学生やクリエイターの方もいらっしゃりますよね。若い世代の皆さんにとっても面白く、とても可能性のある世界が広がっていますよ。

――クリエイターの力でまだまだメタバースが発展していきそうですね。ユーザー側にはどのような変化を感じますか?

ユーザーの母数が増えていくなかで、ライト層が増えている感覚はあります。VRゴーグルなどのデバイスを使わず、スマートフォンで利用する層ですね。

メタバースで成功したい企業が持つべき視点

――「バーチャルマーケット」に出展する企業は、どのような視点を持っているのでしょうか?

メタバースの話題性に注目するのではなく、クリエイターエコノミーやクリエイター消費に期待している企業が多いです。僕たち自身もとても驚いたのですが、昨年7月と12月に「バーチャルマーケット」をリアルな会場で開催する「Vket Real(ブイケット リアル)」には、約5万人に来場いただきました。もともと5,000人くれば御の字と考えていたので大成功でした。

この成功もコミュニティの熱量があったからこそだと思います。イベントの主役であるクリエイターと参加企業、そして私たちが三位一体となって面白いことをする熱にほだされた方がたくさん集まったのです。

――メタバースをビジネスに活用したいと考える企業には、どのような視点を持つと良いでしょうか?

まずは、冒頭お話ししたようなメタバースの本質や、クリエイターエコノミーを理解することが大切です。そして何より、目的をはっきりさせることが大切だと思います。「自社の商品をもっと知ってほしい」などが、わかりやすい目的の一つでしょうか。逆に「何となく流行っているから、メタバースで何かやりたい」というオーダーですと、思ったような成果は得られないかもしれません。そもそも目的が不明確だと成果もピントがずれてしまう。多くの皆さんは、すでにご理解されていると思いますが、メタバースで何かやるだけで話題になるという時代は終わりました。

もちろん提供するプロダクトがよいものであることが前提になりますが、目的に合わせて、クリエイターさんやコミュニティに適切に訴えかけることができれば、高い確率でバズると思います。それを証明するように、「バーチャルマーケット」にはリピートして出展する企業が多数あります。

MetaStep読者の皆さまには、是非一度、「バーチャルマーケット」や「Vket Real」に参加してもらって、熱狂渦巻く様子を体感してもらいたいです。恐らく、お話ししたことをすぐに理解してもらえると思います。

――お話を伺って、2024年7月20日から8月4日に開催される「バーチャルマーケット 2024 Summer」に参加したいと思いましたし、是非取材もさせて頂きたいです。最後に、今後のビジョンについて聞かせてください。

最近は原点回帰も大切だと考えています。バーチャルマーケットは、クリエイターさんとともに発展しました。規模が拡大してきた今だからこそ、改めて、そしてこれからもクリエイターファーストの精神を大切にしていきたいです。

直近では、クリエイターさんが、新たに自分の作りたいものの制作に集中できるサービスやツールも開発しています。

いずれにせよ面白いものを作れば、自然と世界から様々な人が集まるのがバーチャル空間です。そうなれば、世界規模でクリエイターエコノミーを構築することになるでしょう。実際に、そのような動きは出はじめていますが、私たちはそのような未来を思い描きながら、とにかく人々が面白いと思ってもらえるようなことを展開していきたいと考えています。

「バーチャルマーケット 2024 Summer」是非取材にいらしてください。そして、MetaStep読者の皆さんに喜んで頂けるような面白い企画をご一緒にかたちにしましょう。

編集後記

クリエイティブが好きで、クリエイターが集まるコミュニティや、そこから生まれるカルチャーのポテンシャルを知る舟越氏だからこその視点は、メタバースのビジネス活用を考える上でとても重要だと感じました。

最後に、舟越氏からMetaStepへの熱いエールと、企画のご提案まで頂き、大変感激したMetaStep(メタステップ)編集部。早速、「バーチャルマーケット 2024 Summer」に向け、HIKKYの広報の皆さまと企画会議を進めています。

少し先の予告になりますが、MetaStepでは、HIKKYの全面ご協力のもと、世界最速で「バーチャルマーケット2024 Summer」の魅力や楽しみ方を記事でお届けする予定です。皆さまお楽しみに!