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2024.05.07

XRデバイス紹介シリーズvol.4 VRとMRの融合『VIVE XR Elite』とは?

VRヘッドセットを様々な場所で見かけるようになり、店頭などで体験する機会も増えています。しかし、「あんなものをかぶるのは見栄えがよくない」と遠ざけてしまう人も、一定数いるかと思います。

そして、よく聞く遠ざける理由のひとつに「形状が見慣れないゴーグルのようなもの」があります。そして日常生活において、より身近な「顔にかけるもの」といえば、やはりメガネでしょう。

実は、メガネのようなVRデバイスは、すでにいくつか登場しています。『VIVE XR Elite』は、VRだけでなくMR(複合現実)にも対応した、新型デバイスです。メガネのような形状で、装着時は軽く、基礎スペックも十分。では、その使い心地は……? 本記事では、想定できるユースケースと合わせてご紹介します。

デバイスの概要

『VIVE XR Elite』は、スマートフォン・携帯情報端末メーカーのHTCが開発・発売しているXRヘッドセットです。同社が長らく展開しているXRデバイスシリーズ「HTC VIVE」ラインナップの最新機になります。

VRだけでなく、付属するカメラによるMR(複合現実)にも対応しており、現実空間にバーチャルなオブジェクトを重ね合わせる表現が実現できます。また、PCなどの外部機器への接続不要で、ヘッドセット単体で動作します。公式機能などを使えば、PCとの接続も可能です。

上記の特徴は『Meta Quest 3』などと共通していますが、『VIVE XR Elite』の特徴はその形状がメガネ型であるところにあります。後述しますが、メガネに近い装着感で、かつ重量も軽量にできるところがポイントです。

解像度は片目片眼1920×1920の4K相当と、高画質なVR・MRを体験できます。また、構造上メガネとの併用はほぼ不可能ですが、レンズ側に焦点距離調整機能が左右それぞれに備わっており、ヘッドセット側がメガネの代わりとなります。

販売価格は179,000円 (税込)。HTC公式サイトなどで購入可能です。

”変形”ができるレアなXRデバイス

『VIVE XR Elite』の最大の特徴は、上記の通りメガネ型であることです。そして、用途に応じていくつかの形態に”変形”できるのも大きなポイントです。

まずは、シンプルなメガネ状の形態。メガネでいうところの「つる」にあたる部分で、頭部に装着・保持します。この状態の重量は、筆者の実測値では273.5g。現在入手できるVRヘッドセットの中でも特に軽量な部類です。ただし、この形態ではヘッドセット本体にわずかに稼働する分の内部電源しかないため、基本的に外部電源との接続が必須です。

このメガネ型の状態で、「つる」の先端にあるパーツを取り外し、バッテリーユニットに換装すると……

 VRヘッドセットで一般的なゴーグル型に変形します。重量はバッテリーユニットの353.5g(筆者実測値)を加算し、600g超。それでも総重量としては比較的軽めなほうです。

頭部への装着は、従来のVRヘッドセットと同様に、かぶってから後頭部のダイヤルを回し、フィットさせることで行います。前後からしっかり固定するため、装着の安定感はメガネ型よりも上です。

なお、上述した通り、ヘッドセット本体にわずかに稼働する分の内部電源はあります。このため、バッテリーユニットが電源切れになった場合はそれを取り外し、新たなバッテリーユニットに換装することで、電源を落とさないままバッテリー公開ができる、いわゆる「ホットスワップ」が可能です。

ちなみに、「つる」の部分はメガネのように折りたたみ可能。この状態のヘッドセット本体を入れる袋も同梱されており、持ち運びのしやすさは群を抜いています。

万能機のようでいて、課題アリ

(動画引用:HTC VIVE

2つの形態を使い分けできる『VIVE XR Elite』。メガネ型ならば「メガネをかけるように手軽に装着できる」ことが、ゴーグル型ならば「従来のVRヘッドセットのように安定感のある装着ができる」ことが、それぞれメリットです。デバイスとしての特長も、この点に集約されています。

そして、VRだけでなくMRに対応しているのもポイント。VRヘッドセットよりも使い道がそもそも多いのです。MRモードで表示されるヘッドセットの外部映像も、映像自体に補正がかかっていることで、遠近感が適切に表現されており、遠近感が壊れることで生じる事故の抑制が図られています。

と、かなり便利なデバイスのように見えますが、課題もいくつかあります。

まずは形態変化を可能とする構造そのもの。ヘッドセット全体を構成する「つる」の部分は、装着や変形を行う際に、若干可動域外へ広げる必要があります。特に、バッテリーユニット装着時には、人によっては不安になる程度には広げる必要があります。言うまでもなく、この仕組みによって耐久性に懸念が生じており、実際に筆者の周りにいる『VIVE XR Elite』利用者からは破損の報告が上がっています。

また、ヘッドセット本体よりもバッテリーユニットの方が重いため、ゴーグル型の装着時はバックヘビーとなり、後頭部から引っ張られるような独特な重量バランスになります。顔面への負荷は低いものの、重量を支える首への負荷がやや高めです。

万能性こそ宿しているものの、各形態にはクセの強さも見え隠れしており、手放しにオススメはできないのが実情です。配信コンテンツ数も、「Meta Quest」シリーズと比較すれば乏しいのも懸念点ではあります(ただし、VIVEシリーズでのみ使えるアプリもいくつかあります)。

VRとMRの融合デバイスをどのように使うか

『Meta Quest 3』と同様に、VRとMRの2つの使い道があるのが『VIVE XR Elite』の特徴です。この点と、上述した変形ができる点を考慮して、想定されるユースケースを考えてみます。

まずはメガネ型について。長所は「脱着しやすい」と「軽量である」点。この点を活かすならば、「不特定多数向けの体験用デバイス」と「開発機」が挙げられるでしょう。

特に、XRデバイスに不慣れな層にVR・MRコンテンツを体験してもらう場合、「見慣れないゴーグルを頭に取り付ける」ことに、心理的ハードルを感じる方が一定数います。しかし、メガネ型であれば「メガネの延長線」と捉えられ、心理的ハードルは多少下がる可能性があります。

そして実用面でも、「後頭部のダイヤルを回して脱着」という少し面倒な操作を省き、メガネのようにかけ外ししてもらうだけでよいため、現場のオペレーションの難易度は下がるはずです。そしてこの実用面のメリットは、何度もVR・MRでの確認が必要となる、開発の現場でも同様に機能することでしょう。

次にゴーグル型。こちらの長所は「従来のVRヘッドセットのように使える」と「ホットスワップが使える」点です。特にホットスワップ対応なことを活かした、不特定多数を想定したコンテンツ提供に適しています。

バッテリー切れになっても、もう一つのバッテリーユニットに換装し、その間に切れたバッテリーの充電をすることで、永続的に回転ができる……という運用も可能でしょう。顔面にふれるクッションパーツも、マグネット式で脱着できるため、体験ごとにスペアに取り替える運用もできます。

そして、いずれの形態で利用する場合でも、ヘッドセット本体を折りたたんで収納できるため、必要となる現場へ持ち込みやすいのが大きなメリットです。客先などへのハンズオンを行う場合にも活躍するはずです。

エンドユーザー向け自社開発VRコンテンツ体験や、自社プロダクトなどのMR表示確認、開発者向けの確認機運用など、様々な使い道が考えられる『VIVE XR Elite』。メリット・デメリットがはっきりしている分、しっかりとした運用想定が求められるデバイスであることが、念頭に置きましょう。導入の際はビジネス向けソリューション「VIVE BUSINESS」と合わせて検討してみるのがベターです!

次回は、VIVEシリーズをまとめた記事を掲載する予定です。お楽しみに!

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