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2024.06.07

メタバースが拓く学びの未来|教育プロジェクトにおけるメタバースの導入事例

メタバースは様々なビジネス領域において、現実世界と異なる仮想空間での体験を提供しています。そして教育分野においても、「メタバースだからこそ」物理的な制約を超えて多様な学びの場を提供することができると考えられています。今回は「教育プロジェクトにおけるメタバース」という切り口で、活用事例をお伝え致します。メタバースが持つ特性が、単なるコミュニケーションツールとしてでなく、教育分野に存在する課題にもフィットするはずです。

メタバースがもたらす学習環境の自由度

メタバースは、学習環境における物理的な制約を取り払い、自由度の高い教育を実現できます。

例えばメタバース内では、物理的な「教室」のような概念がありません。パソコンやスマホをインターネットにつなぎさえすれば、どこからでも授業に参加できます。このことは、病気や障害などにより一般的な学習環境で学ぶことが困難な子どもたちにとって、大きなメリットになります。学校に通える子も何らかの理由で通えない子も、どちらもが対等に学べる環境が整っており、特定の場所に拘束されることなく、学びたい時に学ぶことができます。

(引用:ニンジャ寺子屋メタバース上で授業が展開される「ニンジャ寺子屋」。メタバース上・YouTube配信で誰もが自由に学び、教えることができる。著名人を招いた授業や、子どもたちが講師になって授業を行ったりするなど非常にユニークだ

またメタバースでは、自分の分身であるアバターを通じて、まったく新しい自己表現を行うことも可能です。障害や怪我など、現実世界において自分の行動を制約する要因から解放されることで、現実世界とは異なる自己表現ができ、自己肯定感を高めることにもつながります。

さらに、メタバースではグローバルなつながりを築く機会も増えます。異なる文化や背景を持つ人々と交流する機会が増え、国際的な視野を養うこともできます。

メタバースを活用した教育支援の事例

ここで、メタバースを活用した教育支援の事例を2つ紹介します。

1つ目は、レノボ・ジャパンと大日本印刷が展開する「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」(VLP)です。

(引用:CNET JAPAN)体験会の様子

VLPは、不登校や日本語の指導が必要な児童・生徒に対して、メタバース上での居場所や学びの場を提供するプラットフォームです。

VLPの導入は、児童・生徒が教室や相談室、保健室などの特別な空間に参加することを促し、SNSトラブルへの対応や、学習の達成感向上などにもつながっているとされています。

また、子供たちの関心を引き付けてコミュニケーションを容易にすると同時に、子供たちの感情に寄り添い、適切なサポートの提供も実現しています。

現代の小中高生はデジタルリテラシーが非常に高く、不登校気味の生徒であっても、バーチャル空間においては円滑なコミュニケーションを取れる可能性があります。

そういった児童・生徒の特性を踏まえると、本取り組みは、現実世界では何らかの理由で学校に行けない子どもに対して、バーチャル空間を通じて様々な角度からケアを行える点が優れていると言えます。

青森県中泊町(なかどまりまち)の英語学習・国際交流プログラム

2つ目は、青森県中泊町が導入を予定している英語学習・国際交流プログラムです。

中泊町では、2025年度から町内すべての小中学校で「グローバル科」の授業を設けることを予定しています。具体的には、学校の教室をフィリピンの教室とオンラインでつなぎ、メタバース内で英語学習や国際交流を行うプログラムを導入することになっています。

このプログラムは、2重の障壁を取り払える可能性がある取り組みです。1つは、国境という障壁。こちらは比較的わかりやすいはずです。そしてもう1つは、「地方と都会の格差」という障壁。こちらも、メタバースがもたらす大きなメリットです。

日本では、概して都会の方が教育環境が整っており、有名な大学も関東や関西に集中しています。また、海外と交流を持てる機会も、都会の方が圧倒的に多いはずです。

地方ではネイティブの英語話者と話せる機会や、留学生と交流できる機会も限られているため、都会と地方では「グローバルな教育環境」について特に顕著な差が見られます。

メタバースは、このような「地方と都会の格差」を埋めるためにも非常に有効であり、中泊町の取り組みはまさにこのメリットを最大限に生かしたものだと言えます。

現実世界の制約からの解放

ここまで見てきたように、メタバースを教育に導入するメリットには様々なものがあります。

その中でも、心身共に成長過程にある子どもたちにとって極めて重要なのが、「現実世界で自分が何者であるかを、一旦脇に置ける」ことにあると考えられます。

現実世界で病気や障害を持っている子、大怪我をしているような子たちが被るデメリットは、思うように教育が受けられないことだけではありません。病気などの程度が大きければ大きいほど、他の子と異なる環境での生活を余儀なくされる部分は確実にあります。

たとえば、体を動かせないことによる物理的な不便さ以外に、「自分は障害者、病人、怪我人である」という事実が、子どものアイデンティティに及ぼす影響は少なからずあるはずです。その結果、自分に自信が持てなくなったり、将来に悲観的になってしまう可能性もあります。

一方、障害や病気や怪我を排除できるのがメタバースです。分身であるアバターには障害も病気も怪我も存在せず、ゆえに子どもたちは「他者と対等な自分」というアイデンティティを、メタバース内で再構築することができます。

これは、普段病気や障害などの「重荷」を負っている子にとって「枷から解放された自由な活動」ができるという意味で、とても大きな体験になります。

単なる学びに留まらないメタバースの価値

物理的な制約を受けないメタバースは、病気や怪我、障害、あるいは国境といった様々なコミュニケーション上の壁を取り払い、すべての子どもたちに平等な学習環境を提供できる技術です。

さらに、「現実世界の自分」とは全く異なるアイデンティティを構築できる場でもあるため、子どもたちの人格形成やメンタル面でのケアなどにも活用できる可能性を秘めています。

メタバースを活用した教育関係のビジネスに取り組みたいと考えている方は、各プロジェクトの具体的な取り組み内容だけではなく、「子どもたちの成長において、メタバースがどのような良い影響をもたらすのか」という点も参考にしてみると良いかもしれません。