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  3. UI/UXから学ぶ! 失敗しない3Dコンテンツづくり

スマートフォンなどのデバイスやウェブサービスは、昔と比べると操作性や表示速度も上がり、日々使いやすくなっています。これは技術の進化だけでは実現できません。ユーザーが操作する画面などの「ユーザーインターフェース=UI」や「ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)=UX」が重視され、進化が積み重なった結果です。

メタバースやXR(=VR/AR/MRの総称)にもUI/UXが重要なのは言うまでもありません。例えば、メタバースでイベントを開催する際、操作性が悪くストレスを与えては、いくらイベント自体=UXが面白くても、ユーザーの満足度は低くなりかねません。逆に、操作性が良くても中身が無いものが評価されないのは言うまでもありません。UI/UXは、メタバースプラットフォーム選定やXRコンテンツづくりにおける大事な指標の一つです。

今回MetaStep(メタステップ)編集部は、UI/UXデザインとテクノロジーに強みを持つ新世代のDX支援会社アイスリーデザインに記事の執筆を依頼。快くお引き受け頂きました。UX/UIへの正しい理解は、あなたのビジネスのきっとお役に立てるはずです。では、よろしくお願いいたします。

※xR/XR表記について:アイスリーデザインの公式では「xR」という表記を使用しておりますが、MetaStepではXRという表記に統一しております。ご了承ください。

株式会社アイスリーデザイン 

デジタルサービス支援のプロフェッショナル集団として、サービスコンセプトからUIのディテールまで神経を行き渡らせ、一貫した顧客体験を創り出します。ユーザーが喜んで使い続け、ファンになり、ビジネスとして成長するモノづくりを支援。AR/VRコンテンツ開発の知見や実績を活かしメタバース・XRのセミナー開催などを手がけ、「0を1にする仕事で新しい世界を創る」をテーマに、未来を切り拓きます。

■はじめに

皆さんこんにちは、アイスリーデザインです。サービスの利用率や継続率向上のために、UI/UXは非常に重要です。今回のコラムでは、メタバースやXRコンテンツの観点からUI/UXを解説します。

メタバースやXRコンテンツは、3DCGで作られたモデルや、読み込みに時間がかからないリアルタイム通信などを駆使することで、没入感の高い体験を提供する技術です。これらの技術は、エンターテイメント、教育、ビジネスなど、様々な分野で活用されることが期待されています。

具体的な利用シーン

-バーチャル空間での会議やイベント開催

-教育現場でのバーチャルフィールドトリップ(オンラインでの校外学習)やシミュレーション

-医療現場での遠隔手術やリハビリテーション

-製造業での製品設計やシミュレーション

-小売業でのバーチャル店舗やバーチャル試着

これらの利用シーンにおいて、体験をより良いものにするためには、使いやすい操作性や分かりやすい画面レイアウトといったユーザーインターフェース(UI)と、体験した際に感じる感情や満足度といったユーザーエクスペリエンス(UX)のデザインが非常に重要です。

(引用:Cluster公式note) 常に見やすく、使いやすいUIづくりが各企業で行われている

Webサイトやスマホの画面といった2Dのデザインとは異なり、3D空間ではまた別のUI/UXデザインが求められます。メタバースにおいて没入感の高い体験を提供するためには不可欠です。

ここからは、その特徴や重要性に触れつつ、ビジネスにメタバースやXRを取り入れる上でのポイントをお伝えしていきます。

■なぜ、UI/UXデザインが重要なのか?

メタバース/XRコンテンツにおけるUI/UXデザインは、2Dコンテンツでは表現しきれなかった奥行きや立体表現が出てくるため、高度なデザイン技術を必要とします。

そもそも、なぜこのようなデザインを考える必要があるのでしょうか? 考えられたUIやUXデザインからは、以下のメリットが生まれます。

ユーザーの満足度を高めることで、滞在時間が延びる

もっといたい、長く遊びたい、利用したいと思わせることは、「メタバース/XRコンテンツで活用する空間において重要な指標」の1つとされている「ユーザーの滞在時間を延ばす」ことにつながります。利用率がアップし、ゲーム内で課金などのシステムを組んでいる場合は、直接的な収益UPも見込めます。

幅広い表現方法を用いて、(企業/ブランド)イメージを向上させる事が可能

Webやスマホといった2Dコンテンツよりも、奥行きが加わったぶん表現の幅が広がるため、これまでに無いような新しい表現が可能。そのため、企業やブランドのポジティブなイメージを構築するのに役立ちます。

ビジネスチャンスが拡大する

使いやすく魅力的なメタバース/XRコンテンツで活用する空間は、既存の概念をデジタル技術で拡張させ、新しい文化や価値を創造します。今は無い新たなビジネスチャンスを生み出せるかもしれません。

■メタバースで意識されているUI/UXデザイン

皆さんがYouTubeを利用する時を思い出してください。

例えば、検索をする時。①ページ上部の見やすい場所に検索ボタンがあり、②マウスや指先でクリック、③文字を打ち込む、という簡単な手順で検索ができるはずです。さらに検索結果は、大きなサムネイルと共にたくさん表示され、スクロールするだけで好きな動画を選べます。

ストレスフリーに利用できているはずですが、これは「動画を見る」ために必要な要素を分解し、ストレスとなる手順を極力抑えた結果です。

しかし、3DであるメタバースとXRコンテンツは、当然YouTubeと同じ画面ではありません。既存のメタバースXRコンテンツにおいても、UI/UXデザインは意識されています。

直感的な操作性

(引用:Oculus Quest2) VRでは、両手にコントローラを持って現実の身体を動かして操作する事が多い 

没入感を少しでも阻害しないために、直感的な操作性が必要となります。リアルで右に動いたら、同時にバーチャル画面でも右に動く同期性があって、初めてバーチャル空間に没入できます。リアルで動いたのにバーチャルでは2秒後に動くというタイムラグがあっては使いにくいはずです。

アバターのデザインや操作性

(引用:VRChat) 人型デザインは操作しやすく、感情表現もわかりやすい

メタバースやVRコンテンツの場合、ユーザーは自身のアバターを通して空間を体験します。バリエーション豊かなアバターのデザインや、思った通りに腕や足が動く操作性が意識されています。多くのメタバースでは、新しいアバターを購入したり、人から貰ったりすることで簡単に着替える事が可能になっています。中にはイベント限定アバターの配布といった施策を打っている企業も。

没入感が演出されている

(引用:XANA) 感覚を刺激するデザインこそ、メタバースやVRの醍醐味

感覚を刺激するデザインを作ることで、ユーザーの没入感を高められます。視覚、聴覚はもちろん、最近では触覚を活かしたVR技術も開発され始めています。

多様なデバイスに対応している

PCだけでなく、VRヘッドセットやスマートフォンなど、様々なデバイスに対応しています。

「VRヘッドセットを持っていないけれどデスクトップでも遊べるのか」、「面白そうだから今すぐスマートフォンでダウンロードしてみようかな」といった形で、ユーザーが普段利用しているデバイスですぐ試せるという手軽さで、利用率のアップに繋がります。

ソーシャル性(=皆が参加できる仕組み)を考慮している

メタバースやVRコンテンツで活用するバーチャル空間は、他のユーザーと交流する場としての側面も強いため、皆が参加できる仕組みをコミュニケーションが活性化し、(=ソーシャル性を考慮したデザイン)が重要になります。

安全性の確保

アバターによるなりすましや、差別的な発言など、メタバースやVRコンテンツで特有のトラブルにも対応しています。運営の細かなチェック、禁止用語のフィルタリングなど、入念なチェック体制があるからこそ、ユーザーが安心して楽しむことができています。

■考えられる課題

メタバース/XRコンテンツにおけるUI/UXデザインは、発展途上の分野です。楽しく面白いサービスや素晴らしいコンテンツは多く存在していますが、将来的に、より多くの人が利用するためには、まだいくつか課題が存在しています。

価格面

VRヘッドセットなどのデバイスは高価なものが多く、最低でも3万円以上は必要です。またメタバースプラットフォームのビジネス向けソリューションにおいても、数十万という価格帯のものがあるため、少し慎重にならざるを得ないのが現状です。

技術面

VRデバイスは年々軽量化が為されていますが、重量があり、まだ多くの人が利用するにはハードルがあります。それに加え、通信速度や処理能力などの技術的な課題も残されています。

高いデザインスキルが必要

3D(リアル/バーチャル)空間での操作やアバターの表現など、従来の2D画面とは異なるデザインスキルが求められます。制作の際のツールやソフトウェアも専用のものを活用することが多い状況です。没入感と操作性を両立させるデザインは日々研究されているものの、まだ難易度が高いと言えます。

マナー違反者やモラル不足なユーザーへの対策

アバターによるなりすましや差別的な発言、嫌がらせ行為など、メタバースやVR空間特有の倫理的な課題も存在します。プラットフォーマーは規約を設けたり、イベント期間中は運営側のスタッフがアバターで参加したりする、などの施策が実施されています。

アクセシビリティ(=利用しやすさ)の考慮

視覚や聴覚に障がいを持つ人など、様々なユーザーがメタバースやVR空間を利用できるように、アクセシビリティの考慮も重要になります。

これらの課題は、単に技術的な障壁を超えることだけではありません。解決することで、より多くの人々が革新的な体験を楽しむことができます。

■技術とデザインで課題を解決!

上記のような課題を解決していくためには、技術開発とデザインの両面からアプローチする必要があります。具体的には以下のような取り組みや解決策が考えられます。

技術開発

VRヘッドセットなどのデバイスの軽量化・低価格化、通信速度や処理能力の向上などが期待されています。「今はまだ広く浸透していない」状態でも、世界中の様々な企業やスタートアップが早いスピードで次のデバイス開発に取り組んでいます。

デザインスキル/ノウハウの蓄積

3D(リアル/バーチャル)空間での操作やアバターの表現など、メタバースやXRコンテンツで活用する空間に特化したデザインスキル/ノウハウの蓄積が重要になります。また、VFX(Visual Effects=視覚効果)やSE(Sound Effects=音響効果)を設けることで、より空間内での体験価値を高めることが可能になります。

(引用:RADWIMPS YouTube公式アーティストがメタバース上でライブする事も多くなってきた。音響と視覚効果が高いレベルでマッチすれば、現実には無い没入感を得ることができる

倫理的なガイドラインの策定

メタバースやVR空間における倫理的な問題に対応するために、ガイドラインなどの策定が必要になります。ただし、難しい言葉で細かな文章を書き並べても、実際に利用するユーザーが全文を読んでくれるとは限りませんから、ユーザーが理解可能な運用ガイドラインを設けることが重要です。特に年齢や国籍を問わずサービス提供する場合、未成年がトラブルに巻き込まれないようなガイドラインの設計は強く求められることが考えられます。

アクセシビリティ技術の開発

年齢や国籍、身体的な特徴に捉われず、様々なユーザーがメタバースやVR空間を利用できるように、アクセシビリティ技術の開発が重要になります。また、海外ではその国特有の事情やルールが存在することもあるため、文化を調査することも必要になります。

このように、メタバースとXRコンテンツが直面する課題への解決策は、技術とデザインの両方が必要とされています。

■メタバース/XR検討時にチェックすべきポイント

メタバースやXRコンテンツにおいて、チェックすべきポイントは下記の通り。当てはまらない場合もありますが、多くのプラットフォームやコンテンツはこれらポイントをきちんと押さえていることが多いはずです。

ユーザー中心の設計

ユーザーのニーズや目標を理解し、使いやすいデザインを心がけることが重要です。直感的な操作性はもちろん、ユーザーに「何を体験価値として届けたいか」を考えてみてください。

没入感を演出する

視覚や聴覚などを中心に、普段の生活において五感を刺激するデザインがどのように設計されているかを分析し、その要素をバーチャル空間で再現することにより、ユーザーの没入感を高めることができます。

アバターを活用した施策を打つ

アバターは、ユーザーの分身となる重要な要素です。動きや表現、精細の度合いなど、ユーザーが自分らしさを表現できるようなアバターを提供することが重要です。また、リテラシーの高いユーザーは、自身でアバターを制作し、メタバース空間にインポートすることが多いため、そういった取り組みも視野に入れることが必要です。

ユーザー間が交流しやすいデザインを作る

メタバースやVR空間は、他のユーザーと交流する場として、ソーシャル性を考慮したデザインが重要になります。ユーザー同士が交流しやすい場所を作り、簡単に会話ができる仕組みづくりが必要です。

メタバースは「3DのSNS」とも言われています。時にはXやFacebookといった2DのSNSにおけるデザインや考え方も参考になるはずです。

(引用:Cluster)ボタン一つで簡単に感情を表現する仕組みで、ユーザー間の会話が盛り上がる

安全性を確保する

特定の人と同じアバターになって迷惑な行動をする「なりすまし」や、差別的な発言や嫌がらせなど、メタバースやVR空間だからこそ発生し得る特有の課題は少なくありません。どのように安全性を確保するかは、これは、MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)などが保持するノウハウや知見から多くのことが参考になります。

メタバースやXRコンテンツにおけるUI/UXデザインを考える際のヒントは、新しい技術で何ができるのかを把握しながら、人間がより人間らしいと感じる動きを再現することが重要です。

■まとめ

「UI/UXデザイン」を考えることは、メタバースやXRコンテンツの可能性を最大限に引き出すための役割を果たします。技術開発とデザインの両面からアプローチすることで、より分かりやすく・使いやすく、そして没入感の高いメタバースやXRコンテンツ体験が実現されると考えられます。

メタバースやXRの成功事例において、UI/UXは綿密にデザインされています。これからメタバースなどの導入を検討する人は知っておくべき知識です。自社に合った施策を打つために、きっと助けになるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

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