1. MetaStep TOP
  2. ビジネス活用を学ぶ
  3. 「キャプテン翼 − ボールはともだちNFTプロジェクト」から学ぶ|ブロックチェーンによるお金の流れの透明化とは

2023.12.22

「キャプテン翼 − ボールはともだちNFTプロジェクト」から学ぶ|ブロックチェーンによるお金の流れの透明化とは

「キャプテン翼 − ボールはともだちプロジェクト」は、NFTを購入することで世界の子どもたちにサッカーボールを届けられるプロジェクトです。理念に賛同したユーザーが暗号資産でNFTを購入し、その売上がサッカーボールの贈呈に使われるという点において、一種の寄付のような取組みだと言えます。

このように、暗号資産やNFTそして基盤となるブロックチェーン技術を、寄付やクラウドファンディングのような取組みに導入することは非常に有効です。

「大多数の人から支援や応援を目的として資金を集める活動」において、ブロックチェーンを活用する意義とはどういうことか?わかりやすく解説します。

プロジェクト概要

この企画は、ブロックチェーン技術を用いたアプリケーション開発を行うdouble jump.tokyo株式会社と株式会社TSUBASAによる共同プロジェクトです。

(引用:PRTIMES

日本を代表するサッカー漫画「キャプテン翼」の名シーンが描かれたNFTを購入することで、購入者と世界の子どもたちの双方にサッカーボールが届けられます。NFTの販売にはイーサリアムチェーンが使われ、プレセールでは1点あたり0.08ETH、パブリックセールでは0.1ETHで販売されました。

子どもたちに届くのがお金ではなくサッカーボールという違いはあるものの、基本的な枠組みは通常の寄付と同様に見えるこの取組み。実は決定的に異なる点があります。それは、お金を集める手段としてブロックチェーンや暗号資産、NFTを活用している点です。

寄付やクラウドファンディングのように「大多数の人から支援や応援を目的として資金を集める活動」は、ブロックチェーンの特性が非常にマッチするユースケースです。

ここから、寄付やクラウドファンディングなど(以下、寄付とします)においてブロックチェーンを活用する目的について解説します。

ブロックチェーンを活用する目的

ブロックチェーン技術を寄付に活用することで得られる効果は、大きく以下の3つがあります。

●資金の流れの透明化

●グローバルな寄付ができる

●レトロアクティブな評価ができる

ブロックチェーン技術が持つ特性についても触れながら、これら3つについて解説します。

資金の流れの透明化

得られる効果の1つめは、資金の流れの透明化です。

既存の寄付の仕組みには、「集められた寄付金の使途が見えにくい」という課題があります。団体によっては寄付金がどのように使われたかを公開していないことがあり、その結果、「本来の目的で寄付金が使用されているか」を確認することが困難になってしまっています。悪質なケースでは、最初から詐欺目的で寄付金を集めている団体もあるかもしれません。

これらはいずれも「寄付された後の寄付金の流れを、第三者が客観的に確認できない」ことに原因があります。しかし、寄付の仕組みにブロックチェーンを導入することで、この問題が大幅に改善されます。

(引用:写真AC

まず、ブロックチェーンには「取引の透明性が非常に高い」という特徴があります。具体的には、ブロックチェーン上の取引は常に世界中のユーザーが閲覧できる状態になっているということ。さらに、取引の履歴を誰かが恣意的に削除したり改ざんしたりすることもできません。

たとえば、あなたがAという寄付団体に100万円分の寄付をし、その後AからBという団体に実際に寄付金が送られたとします。なお、寄付のプラットフォームはビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンを用いて構築され、寄付自体は暗号資産(BTCやETH)で行ったと仮定します。

このケースでは、ブロックチェーンと暗号資産を用いて寄付を行っていることにより、以下の情報がすべて「誰でもアクセスできる情報」として公開されることになります。

●寄付者は誰か(あなた自身。ただし、プライバシーは保護可能)

寄付を集めている主体は誰か(団体A)

寄付の金額はいくらか(100万円分)

最終的に寄付を受け取る主体は誰か(団体B)

暗号資産が送金された日時はいつか

そして、一度ブロックチェーンに刻まれたこれらの情報は、削除・改ざんすることができません。

その結果、「寄付金が持ち主不明の暗号資産ウォレットに送られる」、「寄付金の一部しか受取り団体Bに送金されていない」といったおかしな動きがあれば、必ず見つかってしまうという状態を作ることができます。

ブロックチェーンのおかげで「資金の流れの透明化」が高度なレベルで実現し、その結果、寄付のスキームの中で不正行為や詐欺が発生するリスクを押さえることにつながります。

グローバルな寄付ができる

得られる効果の2つめは、グローバルな寄付が可能になることです。

ブロックチェーンの特徴の1つに「ピア・ツー・ピア(Peer to Peer)の取引が可能」というものがあります。これは、間に仲介者を挟まない直接の取引のことを指します。

資金の送金を例に挙げると、送る側(A)と受け取る側(B)の間に銀行やカード会社、その他の決済プラットフォームなどが入ることなく、Aの暗号資産ウォレットからBの暗号資産ウォレットに直接お金を送ることができます。

私たちが誰かに現金を手渡しする時、誰の仲介も必要とせずに渡すことができるのと同じように、ブロックチェーンを使えば暗号資産というデジタルな資産を「仲介者なし」で送金できます。

これは、送金先が日本国内の場合はもちろん、相手が海外にいる場合も可能です。その結果、海外の団体に対しても個人が直接寄付金を届けることが、理論上はできるようになります。

(引用:写真AC

従来の国際送金システムは多額の手数料がかかることが多く、寄付金から手数料を引いた残額だけが寄付先に届けられるということが起こり得ます。

寄付者にとって、寄付をした金額の一部が手数料支払い等に充てられてしまうのは、望ましいことだとは言えません。

ブロックチェーンと暗号資産を使うことで、このような状況を改善し、仲介者不要のグローバルな寄付を実現できます。

レトロアクティブな評価ができる

得られる効果の3つめは、寄付者に対して「レトロアクティブ」な評価が可能になることです。

レトロアクティブとは、直訳すると「過去にさかのぼって効果がある」という意味があります。この言葉は、新興のDeFi(分散型金融)プラットフォームやNFTプロジェクトにおいて用いられることが度々あります。

例えばDeFiプラットフォームでは、ローンチ直後からサービスを利用してくれたユーザーに対して、独自トークンを後日大量に配布するといった例が見られます。「サービスが立ち上がったばかりの頃から使ってくれてありがとう」という、プラットフォーム側からのお礼に近い意味が込められています。

通常、誕生したばかりのDeFiプラットフォームはリスクも高く、ユーザー側もそのことを理解し、相応のリスクを取った上で利用しています。このような「リスクを取った古参ユーザー」に後から報いる行為は、まさにプラットフォーム側が「レトロアクティブ」の観点からユーザーを評価しているものだと言えます。

そしてこれは「取引が半永久的に記録され、かつ削除・改ざんできない」というブロックチェーンの特性があるからこそ実現できる考え方です。

一般的なサービスでは、ローンチ直後にサービスを利用してくれたユーザーを正確に特定することは困難です。特に、サービス開始から数十年が経過しているようなケースであれば、初期ユーザーを特定することが事実上不可能なケースもあるでしょう。

しかし、ブロックチェーンを活用したサービスであれば、誰がいつサービスを利用していたかを明確に特定できます。これは、寄付の仕組みにも当てはめることができます。

寄付はあくまで寄付者の良心に委ねられた行為であり、寄付者自身は必ずしも見返りを求めているわけではないでしょう。しかし、寄付を受けた側が「寄付をしてもらったお礼をいつか返したい」と思うことはあるかもしれません。

この仕組みにブロックチェーンを活用すれば、寄付から数年が経った後でも、寄付者に対して恩返しをするといったことが実現可能になります。

このように、寄付者の過去の振る舞い(=寄付をしたという事実)に対して、寄付を受けた側が後から報いる行為も、一種のレトロアクティブだと考えることができます。

(引用:写真AC

資金を「集める側」の視点に立つ

本記事では、寄付などの仕組みにおいてブロックチェーンや暗号資産を活用する意義について解説しました。

この仕組みは、「大人数から資金を集めることを伴うビジネス」に取り組むことを考えているビジネスパーソンの方にも役立つかもしれません。

特にレトロアクティブのような概念をビジネスに絡めることで、資金だけではなく、初期から事業に貢献してくれる仲間集めにもつながる可能性があります。

ぜひ本記事の内容を参考に、ブロックチェーンが持つ可能性について深く学んでみてください。