「VR」という言葉とあわせて、「クエスト2」という単語も耳にする機会が増えているかもしれません。「クエスト2」とは、『Meta Quest 2(旧:Oculus Quest 2)』のこと。マーク・ザッカーバーグ氏率いるMeta社より発売された、VRヘッドセットです。
いまや家電量販店でも目にすることのある『Meta Quest 2』ですが、イマイチどんなものかわかっていない方も多いはず。本記事では、『Meta Quest 2』での特徴や、ビジネスシーンで想定されるユースケースについて、ご紹介していきます。
(動画引用:Meta Quest Japan)
『Meta Quest 2』は、Meta社より発売中のVRヘッドセットです。
スマートフォンなどで体験できる360度動画とは異なり、方向だけでなく奥行きまで表現される本格的なVRが、ヘッドセット一台で体験できるのが大きな特徴。2020年に発売後、世界中で数多く流通したVRデバイスのひとつで、現在もコンシューマーからビジネス用途まで幅広く活用されています。
機材は、ヘッドセットと左右のコントローラーで構成されています。ヘッドセットは充電式(USB Type-C)、コントローラーは乾電池式(単三電池1本)。ヘッドセットの連続稼働時間は、用途次第ですが2〜3時間程度です。
(動画引用:Meta Quest Japan)
使用にあたっては「Metaアカウント」が必要になります。これはMeta社のVRデバイス利用に必要となるアカウントシステムで、メールアドレスまたはFacebookアカウントを使って作成できます。また、初期セットアップには専用のスマートフォンアプリが必要となるので、事前にダウンロードしておくのがおすすめです。
購入はMeta社の公式サイトのほか、国内の家電量販店や通販サイトで行えます。数あるVRデバイスの中でも、国内販路が非常に多く、その気になればお近くの家電量販店に赴いて手に入れることもできるはずです。
『Meta Quest 2』の特徴を簡潔にまとめると、「安価でお手軽」に尽きます。
以下にてより詳細に解説していきましょう。
(動画引用:Meta Quest)
『Meta Quest 2』は、「一体型」「スタンドアロン型」と呼ばれるタイプのVRヘッドセットです。PCなどの外部デバイスが不要で、本体の電源を入れ、頭にかぶるだけですぐにVRを体験することができるのが特徴です。
このため、「ある場所にヘッドセットを持ち込んで誰かに体験してもらう」ということが非常にやりやすく、体験型の展示や、コンテンツのプレゼンテーションに適しています。初期セットアップも簡単なため、箱から取り出してすぐに使える手軽さがウリです。
一方で、PCとの接続にも対応しています(ゲーミングPCなど相応のスペックのPCが必要)。有線・無線どちらでもPCと接続可能で、PCがなければ体験できないコンテンツの体験や、VRコンテンツ開発などにも活用できます。こうした特徴から、比較的”つぶしがきく”VRデバイスでもあり、新たなデバイスの登場時にも腐りにくい方です。
『Meta Quest 2』の価格は、2024年1月時点で128GBモデルが税込39,600円、256GBモデルは税込46,200円です。発売後、何度か価格改定が発生していますが、2024年1月1日に現在の価格に改定されました。
この価格は、数あるVRヘッドセットの中でも特に安価です。そして、最低限の動作にはPCは不要なため、個人・法人問わず、「お試しで一台買ってみる」がやりやすいデバイスと言えるでしょう。
(動画引用:Meta Quest Japan)
対応アプリの多さも大きな長所です。ゲームやエンタメはもちろんのこと、3Dモデリングやオンライン会議、昨今話題の「メタバース」など、様々な種類のアプリが配信されています。公式機能『Horizon Workrooms』のほか、2023年12月には『Microsoft Office』も配信され、ビジネス用途も開拓されています。
アプリは専用のストアから購入・ダウンロードします。大きな特徴として、メインとなる公式ストアのほか、審査が未完了のアプリが配信される「App Lab」と呼ばれるストアも存在します。試験段階のアプリもこの方式で配信できるため、自社でコンテンツ配信をしたい際には覚えておくとよいでしょう。
(引用:Meta公式)
また、充電バッテリー付きのヘッドストラップやキャリングケースなど、アクセサリー類も豊富です。サードパーティ製品もふくめれば相当な数が存在するため、ユースケースに合わせたデバイスカスタムも効くのも特色の一つです。
上記の特徴から、『Meta Quest 2』は数あるVRデバイスの中でも、比較的導入ハードルが低めです。このため、一括で複数台配備したい場合の最適解となります。
とりわけ、社員研修にVRトレーニングを導入する場合に有効でしょう。対人コミュニケーションが重要な接客業や営業職、再現性の難しい場面の体験が重要な建設・工事・管理業や医療関係において、VRトレーニングは効果的です。また、テレワークの進んだ職場でチームでの稼働が重視される場合の社内交流ツールとしての導入も考えられます。
(画像引用:株式会社ヌーラボ プレスリリースより)
先行する事例としては、世界的コンサルティング企業のアクセンチュアが6万台の『Meta Quest 2』を導入し、新入社員の研修に活用しています。国内でも、『Backlog』などを提供する株式会社ヌーラボが、2021年に全社員へ『Meta Quest 2』を支給し、コロナ禍の社内コミュニケーション促進を図った事例があります(参考)。
(画像引用:株式会社シノダック プレスリリースより)
岐阜県のテント製造・施工を行う株式会社シノダックも、建設現場や倉庫作業での危険作業にあたっての安全教育に、『Meta Quest 2』とメタバースを活用しているとのことです。同社は従業員数30名ほどの中小企業で、このくらいの規模の企業でも活用できるところに、『Meta Quest 2』の汎用性の高さがうかがえます。
(動画引用:N高等学校・S高等学校より)
社員以外のゲストなどに、大量のVRデバイスを体験・支給したい際にも、『Meta Quest 2』は候補に上がります。学校法人角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校・S高等学校では、普通科の生徒に『Meta Quest 2』が貸与・提供され、学習やアクティビティなどに活用されています。
(画像引用:東京理科大学・創域理工学部公式サイトより)
東京理科大学・創域理工学部では、ソーシャルVR『VRChat』を活用した異分野学術交流イベントを開催した際、『VRChat』未経験者20名に『Meta Quest 2』を貸与するという取り組みを実施。イベント前に事前講習会も行うなど、提供しやすい特性を活かした活用がなされています(詳細)。
なお、ビジネス用途の場合、サブスクリプションプラン「Meta Quest for Business」で、複数人の利用を想定した「共有モード」などを利用できます。多人数運用を見越す場合は、デバイス導入と合わせてMeta社セールスチームへ問い合わせてみるのがベターでしょう(詳細はこちら)。
一方、発売から3年以上が経過したデバイスということもあり、基礎スペックはそこそこといったところ。画面の鮮明さや処理性能などは、後発のデバイスにゆずる部分も増えています。
なにより、Meta社からは新型XRデバイス『Meta Quest 3』が2023年に発売されており、現時点の『Meta Quest 2』は”旧世代機”に相当します。2024年1月時点では『Meta Quest 3』と併売されていますが、今後遠くないうちにディスコンとなる可能性は視野に入れておくべきかもしれません。
とはいえ、入手しやすく、扱いやすく、カスタマイズも効きやすい。VRデバイスとしては類を見ない利便性は、今後もしばらく有効でしょう。ビジネスへの導入はもちろんですが、本格的な導入前に「VRってどんなもん?」と、担当者が試してみる上では有力候補です。