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2024.02.21

米大手小売ウォルマートから学ぶ|食品のトレーサビリティ確保とWeb3

売上高、従業員数ともに世界最大を誇る米国の小売業ウォルマート社は、伝統的な業態を残しつつも、近年では急速にDX化を進めています。

特に注目すべき点は、ブロックチェーン技術を駆使した食品トレーサビリティの強化です。この取り組みによりサプライチェーン全体の透明性が増し、消費者の信頼が深まると同時に経済効率性も大幅に向上しています。

業界全体が食品の安全性を巡るグローバルな課題に直面する中、ウォルマートの取り組みは他企業にとっても価値あるモデルになっています。ウォルマートがブロックチェーンをどのように食品サプライチェーンに適用しているのか?その目的と効果についてわかりやすく解説します。

(引用:Walmart公式サイト

ウォルマートの取り組みの概要

ウォルマートは、IBMが開発した「IBM Food Trust」 と呼ばれる技術を導入することで、食品サプライチェーンの透明性を大幅に向上させています。

「IBM Food Trust」にはブロックチェーンが活用されており、これにより製品の調達経路の追跡にかかる時間が数日から数秒にまで短縮されました。加えて、食品の産地情報など、消費者に提供する情報の透明性も向上しています。

従来の食品サプライチェーンが抱えていた問題点、およびその解決に向けてブロックチェーン技術が果たす役割とは?詳しく解説します。

食品サプライチェーンにおける問題点

現代の食品サプライチェーンは、その複雑さから多くの課題を抱えています。

その中でも、トレーサビリティの複雑性、食品偽装による信頼性の欠如、およびサプライチェーンの不透明性は、消費者の信頼と健康に直結する重要な問題だとされています。

(引用:写真AC

トレーサビリティの複雑性

従来の食品トレーサビリティシステムでは、製品がサプライチェーンを通じて移動する各段階を追跡することが困難でした。具体的には、生産者から小売店に至るまでの各段階に情報が散在することで、特定の食品の出所を追う作業に時間がかかり、非効率なものになっていました。

例えばウォルマートの場合、スライスマンゴーの出所を特定するのに6日以上かかっていたという事例があります。このような作業の遅延は、リコールが必要な場合などに迅速な行動を妨げ、消費者の健康を危険にさらす可能性があります。

食品偽装 による信頼性の欠如

食品偽装は、品質と安全性の面で消費者を信頼を低下させる行為です。

食品偽装が起こるパターンは多岐にわたり、故意に行われる悪質なものから、誤ったラベリングや産地表示の不備まで存在し、いずれも消費者の健康と信頼を損ねる要因となっています。製品の真実性を損なうこれらの行為は、市場での信頼低下に直結し、長期的なブランド価値の毀損をもたらしかねません。

サプライチェーンの不透明性

サプライチェーンの各段階における情報の欠如や不透明性は、製品の安全性や品質について消費者に疑念を抱かせることに繋がります。

特に食品業界においては、生産地や成分の詳細が不透明であることは、食の安全に対する人々の関心が高まっている現代においては深刻な問題です。また、不透明なサプライチェーンは、消費者が購入を決定する際の重要な情報を隠蔽することにもなり、結果として市場全体の信頼も低下させてしまいます。

ブロックチェーンを活用する目的

ブロックチェーン技術は、ウォルマートなどの企業が直面するサプライチェーンの課題を根本から解決するための鍵になります。

ブロックチェーンの技術的な強みとして、不変性、透明性、リアルタイムのデータ処理能力などがあります。これらは、トレーサビリティの効率化、食品安全性の向上、サプライチェーンの透明性向上に大きく貢献します。

トレーサビリティの効率化・迅速化

ブロックチェーンの不変性とリアルタイムデータ処理能力は、トレーサビリティのプロセスを劇的に改善します。

ウォルマートでは、ブロックチェーンを導入することで、製品の追跡にかかる時間が、従来の数日から数秒に短縮されました。この迅速な追跡能力により、リコールや品質問題に対する反応時間が大幅に短縮され、食品の安全性をより確実に保証できるようになりました。

食品安全性と品質管理の向上

ブロックチェーンの透明性と改ざん防止機能は、食品の安全性と品質管理にも繋がります。

製品の出所や処理過程に関する正確な情報がいつでも利用可能になり、食品の産地偽装や不正を防ぐことができます。ウォルマートでは、中国の豚肉や米国のマンゴーなどのサプライチェーンにブロックチェーンを適用し、消費者に対して製品の品質と安全性に関する透明性を提供しています。

透明性の確保と消費者の信頼構築

ブロックチェーンの情報公開性と追跡可能性により、サプライチェーンの各段階の情報が明らかになります。

これにより、消費者は購入する食品の正確な履歴を知ることができ、企業や製品に対して信頼を置くことができるようになります。ウォルマートのブロックチェーンの導入は、消費者が「正しい情報に基づいた意思決定」を行えるようにし、最終的に市場全体の信頼性も高めることに貢献しています。

ブロックチェーンで新たな食品安全を切り開く

本記事では、ブロックチェーン技術を活用した食品トレーサビリティの確保について解説しました。

従来の食品サプライチェーンの複雑さは「非効率性」と「不透明性」の問題を引き起こし、消費者の信頼を損なう原因になっていました。しかし、ウォルマートのような企業が率先してブロックチェーンを導入することで、ブロックチェーンの技術的な特徴がトレーサビリティの課題克服につながることが明らかになってきています。

食品業界に限らず、何らかの形でサプライチェーンの構築や管理に携わっている事業者の方は、ブロックチェーン技術の導入を検討してみてはいかがでしょうか。