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2024.02.21

XRデバイス紹介シリーズvol.3 スマホで出来る!超小型モーションキャプチャー『mocopi』の活用事例

「我が社もVTuberをやろう!」という声が、どのくらい各所で響いているかは想像するほかありませんが、自社の広報的なポジションとしてVTuberやイメージキャラクターを抱え、定期的に”動かす”という需要は、少なからず存在します。

とはいえ、せっかく3Dモデルを作っても、動かすための設備を調べれば「カメラ1つ1億円」という情報が出てきたり、スタジオを借りるにしてもそこそこの費用が見積もられるもの。せめて自社の会議室で動かせないものだろうか……と悩んだご担当者もいるかと思います。

そんなニーズが、小さなセンサーとスマートフォンだけで叶う時代がきています。ソニーから発売されたモバイルモーションキャプチャー『mocopi』です。本記事では、『mocopi』の基本的な情報から、ユースケースの考察まで、幅広く紹介していきます。

デバイスの概要

(動画引用:Sony (Japan))

『mocopi』は、ソニーから発売されているモバイルモーションキャプチャーデバイスです。頭部、両手首、腰、両足首の計6箇所に装着する小型のセンサーと、スマートフォンで動作する専用アプリケーションで構成されます(iOS、Android両対応)。通常販売価格は49,500円(税込)です。

(動画引用:Sony (Japan))

各箇所にセンサーを取り付け、スマートフォンと通信接続すると、加速度センサーおよびジャイロセンサー、およびAIを活用し、全身の動きをリアルタイムで取得。アプリ上で表示・記録することができます。さらに、スマートフォンをPCへ接続することで、モーションデータをPC上のアプリケーションへと渡すことも可能です。

従来であれば大規模かつ高価な設備が必要となるモーションキャプチャーを、小さなセンサーとスマートフォンだけで実現することが最大の強み。3DCGモデルの動作や、モーションデータの記録などを、手軽かつ安価に実現することができる、新機軸のデバイスです。

軽くて小さく、屋外でも使えるモーションキャプチャー

『mocopi』の大きな特徴は、そのサイズ感と、屋外でも活用できる汎用性にあります。以下にて細かな特徴をご紹介していきます。

軽い・小さい

(筆者所有の『mocopi』。ケースが充電ドックを兼ねている)

なにより最大の特長が小型であること。直径3.2cmという手のひらにすっぽりおさまるサイズと、1基8gという破格の軽さから、装着している感覚はほぼありません。なんなら装着したまま日常生活を送ることも余裕です。

(『mocopi』センサーを手に取った様子。手の中にすっぽりと収まるサイズ)

装着も、専用のバンドにカチッとはめた上で、手首などに取り付けるだけ。非常に簡単で、センサーも部位ごとに色分けされているので、迷うことはありません。

本来、モーションキャプチャーは複数台の高価なセンサーを設置した上で、体を動かす人が専用のスーツを着用する、大掛かりな準備が必要です。しかし『mocopi』であれば、ある程度身体を動かせるスペースさえあれば、普段着のままモーションキャプチャーを実施することができます。

屋外でも使える

上述の通り、モーションキャプチャーは専用設備を整えた場所が必要です。しかし『mocopi』の動作に最低限必要なのは、センサーとスマートフォンのみ。この2つがあれば、どこでも利用できます。

(参考動画:VTuberのぽんぽこ&ピーナッツくんによる、屋外での『mocopi』活用例)

極端なことを言えば、屋外でも使えます。センサーがとにかく小型なので、長袖や帽子などでセンサーが見えないようにすれば、まるで普通の人が屋外を歩いているのに、実はモーションデータを記録していた……ということまでできるのです。

いちおう、センサーの仕様上不向きな環境(※通信電波が多く飛び交う場所など)こそありますが、基本的には使う場所をあまり選びません。大掛かりな設備の準備がいらないという点で、運用コストはかなり低めです。

拡張性の高さ

これだけ便利なデバイスでも、利用できるのがスマートフォンの専用アプリのみだと使いにくいですよね。『mocopi』の場合、専用アプリからさらにPCへつないだり、そのほかのアプリへ連携できるため、利便性がかなり高くなっています。SDKも公開されているため、自分でアプリ開発することも可能です。

(動画引用:Sony | mocopi | RAYNOS-chan)

公式機能のアップデートも頻度が高め。これまでのアップデートによって、センサーの装着位置を変えることで、バストアップの動きの精度を向上させるモードや、逆に下半身の動きの精度を向上させるモードなども解禁されるなど、ユースケースは着々と増えています。

スマホ単体でも、PCとの連携でも使える上、サードパーティ製アプリが生まれやすく、公式も次々にアップデートしていく。いま現在の『mocopi』は、これらを総合した拡張性の高さもポイントです。

ユースケースについて

上記のような特性からなんとなく想像できると思いますが、『mocopi』をどのような場面で活用できるか、ユースケースを考えてみましょう。

3Dモデルを動かす

昨今、VTuberが流行するにあたり、自社でイメージキャラクター(あるいは、広報的な存在のVTuber)をつくり、稼働させたいと考える企業も少なくありません。

大型スタジオを借りる・作るという手もありますが、『mocopi』なら対応スマートフォンさえあれば、大掛かりな設備がなくとも3Dモデルを動かすことができます。専用アプリだけでも簡単な動画を撮ることができるので、「とりあえず試してみる」が比較的やりやすいのもポイント。本格運用する場合は、PCに接続して「バーチャルモーションキャプチャー」などの特化ソフトとの連携などにつなげるとよいでしょう。

(参考動画:ホロライブ所属VTuberの星街すいせい、さくらみこによる『mocopi』活用例)

具体的な実用例で言えば、国内の大手VTuber事務所のひとつ『ホロライブプロダクション』では、タレントが配信で用いるシステムを『mocopi』に対応させています。大掛かりなスタジオ配信でなくとも3Dモデルを全身で動かせることで、タレントの表現力の拡大が期待できます。

(参考動画:ソニーが実施した『mocopi』活用のARライブ実証実験映像)

開発元であるソニーも、『mocopi』を用いたARライブの実証実験を行っています。この実証実験では、(電波干渉を抑えるためか)電磁波遮蔽カーテンで囲んだ小屋の中で『mocopi』を装着した演者が動き、3Dモデルを動作させています。

注意すべき点は2つ。一つは、『mocopi』専用アプリは「VRM」という形式の3Dモデルが必要になる点。それ以外の形式は対応していないので、3Dモデルを準備する際には念頭に置きましょう。また、平面のイラストがアニメーションで動くもの(Live2Dなど)にも対応していません。

もう一つは、『mocopi』そのものの特性について。加速度センサーとジャイロセンサーを採用している都合上、『mocopi』が得意とするのは「大きく、早い動き」で、逆に「小さく、ゆっくりとした動き」や「静止」は少し不得意です。また、時間が経つごとにトラッキン位置のズレも発生しがちです。

これらもアップデートによって改善傾向にありますが、「短時間に大きく、早く動かす」という運用が最適である、という点は意識しておくとベストです。短尺の動画、それこそ流行りのショート動画の撮影では問題なく活躍するはずです。

ソーシャルVR(メタバース)での活用

(筆者による『VRChat』での『mocopi』動作テスト動画。2024年現在はこれよりも動作精度の向上は可能)

上記「3Dモデルを動かす」の派生として、ソーシャルVRと呼ばれるVRプラットフォームにて、3Dモデルの全身を動かすためのデバイスとしても活用が見込めます。現時点で対応されているのは『VRChat』、『cluster』、『バーチャルキャスト』などです。

これらのプラットフォームで運用する場合は、VRヘッドセットとの併用がほぼ必須となります。このため、手首のセンサーを太ももに移設して動作させる「下半身優先モード」での運用が効果的です(両手の動きはVRヘッドセットのコントローラーが担当します)。

既存の類似デバイスと比較すると、やはり小型であることが最大のメリット。一方で、動作精度などは他にゆずるところがあるため、徹底的に精度を上げたい場合は別の選択肢も一考しましょう。

モーションデータの記録

動きそのものの記録という、モーションキャプチャーの本分ともいえる活用も、もちろん見込めます。これも、本格的な設備と比較すると精度は落ちるかもしれませんが、やはり手軽さが最大のメリット。モーションはBVH形式で保存できます。

直近では、アニメ作品『葬送のフリーレン』第15話にて、劇中のダンスシーン制作過程で『mocopi』を装着したダンス講師のモーションを活用しようという試みが確認されています。最終的に、このとき記録したモーションは活用されず、実際の講師の映像をもとに手書きで対応されたとのことですが、ユースケースのヒントとなる一例です。

公式開催のイベントもチェック

(動画引用:Sony | mocopi | RAYNOS-chan)

動き、という汎用性の高いものを扱うデバイスなので、その活用例は想像以上に多いものです。活用例を考えるヒントとして、公式に開催されている『mocopi』のSDKを活用した作品発表イベント『mocopi Autumn Camp』や『mocopi Winter Camp』があります。様々な開発者による開発事例が紹介されているので、『mocopi』をお手に取った際には合わせてチェックしてみるとよいでしょう。

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