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2024.06.13

交通システムにおけるPLATEAU(プラトー)の活用事例3選

国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクトPLATEAU(プラトー)。デジタルツイン技術を用いてデジタル上に再現された都市データは、防災や都市開発、映像作品の舞台まで幅広く活用されています。

今回は「交通システム」に焦点を当て、PLATEAU(プラトー)を活用した3つの活用事例を紹介します。

(過去に掲載したPLATEAUの基礎知識「PLATEAU(プラトー)とは?国土交通省が主導する都市の3Dモデル化プロジェクトを紹介」も是非併せてご覧ください。)

工事車両の交通シミュレーション

(引用:PLATEAU

大阪市の大規模再開発において、3D都市モデルを活用した工事車両の搬入経路シミュレーションを実施しました。建物や道路等のオブジェクトに加え、都市の属性情報(住宅や商業エリアなど)もアルゴリズムに取り込み、最適ルートの算出を試みました。地域住民の生活圏や騒音レベルにも配慮しています。

検証の結果、「複雑な搬入計画・調整業務の効率化」や「住民・運送業者等への分かりやすい情報提供」が可能になりました。3D都市モデルの建物データを利用することで、シミュレータ構築がより簡便・迅速に行えるだけでなく、属性情報という、3Dモデルならではのデータ活用で、より現実的な条件でシミュレートできました。

(引用:PLATEAU)騒音シミュレーション結果を反映した住宅街の3D都市モデル

今後は交通量や混雑度等の変数の取得とアルゴリズムへの取り込み、シミュレーション結果の現実の工事計画への反映方法等の検討を進める予定です。大規模建設工事において地域住民の安心と円滑な工事の両立を可能とする「建設物流プラットフォーム」の構築を目指し、将来的には全国の建設工事への展開を視野に入れています。

交通事故発生リスクのAI評価・可視化による事故の未然防止

(引用:PLATEAU

PLATEAUの3D都市モデルを活用し、交通事故発生リスクを評価・可視化するAI技術の開発が進められています。本プロジェクトでは、三井住友海上火災保険株式会社とMS&ADインターリスク総研株式会社が開発した「事故発生リスクAIアセスメント(リスク評価)」と3D都市モデルを組み合わせ、交差点の死角を推定する「死角パラメータ」を開発しました。死角パラメータは、交差点の死角等を考慮した1.6mの目線の高さでの見通しの良さをパラメータ化したものです。

これにより、交通事故発生リスク評価の高精度化を実現し、要対策箇所の抽出や優先順位付けを行うことで、交通事故の未然防止に貢献することを目指しています。

(引用:PLATEAU

愛媛県松山市をパイロット都市として、市内の全公道・全交差点の事故発生リスクを評価・可視化し、EBPM(証拠に基づく政策立案)を支援することで、交通事故未然防止型の安全対策を実施します。

将来的には多くの官庁や事業者と共に、潜在的危険箇所を含めた全ての道路・交差点について、信頼度の高い根拠に基づく交通安全対策を進め、交通事故のない社会の実現を目指しています。

AGV(無人搬送車両)の自律走行システムの構築

(引用:PLATEAU

PLATEAUの3D都市モデルをマップとして活用したAGV(無人搬送車両)の自律走行システムの構築が進められています。近年主流となるLidar SLAM(自己位置推定と同時に周囲の点群を作成する技術)を用いた自己位置測位(人や物がある時点でどこにあるか)は、事前の点群マップ取得のコストやルート選定の硬直性が課題でした。

そこで、3D都市モデルから仮想Lidarを用いて点群マップを生成し、現実空間の自己位置測位を行うシステムを開発。実証結果では建物が密集したエリアでは高い精度を実現したものの、3D都市モデルで再現されていない場所では自律走行が難しいといった課題も残りました。

(引用:PLATEAU)3D都市モデルを仮想車両が走行する様子

今後は点群生成アルゴリズムの改良やゲームエンジンを用いた汎用的なシステム構築により、AGVの自律走行の社会実装を目指しています。

まとめ

PLATEAUの3D都市モデルは、交通シミュレーションや事故発生リスクの評価だけでなく、無人搬送車両の自律走行システムにまで活用されています。これらのシステムを開発するには正確かつ豊富な情報を持つ都市データが必要となるため、住宅や商業エリアといった属性情報を持つPLATEAUが役立つのです。

将来的な交通システムの高度化に大きく寄与することが期待されているため、交通システムに関わる方は今回紹介した事例を参考に、デジタルツインの活用を検討してみてください。