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2024.04.23

サプライチェーンの課題解決に向けたブロックチェーンの活用事例

原材料の調達から生産、流通、販売を経て、エンドユーザーに商品やサービスが届けられる仕組みのことを「サプライチェーン」と呼びます。ここにインターネット以来の技術革新とも表現される「ブロックチェーン技術」を取り入れ、活用している事例が増えてきています。

原材料からエンドユーザーに届けられるまで、複数の企業が複雑に関係するサプライチェーンでは、企業間の情報の共有や品質管理が課題です。企業によって商品の配送時期が日によってバラバラだったり、検品の精度にムラがあったりしては、一定の品質を保ち、エンドユーザーに届けることができません。

この課題解決に活かされているのがブロックチェーン技術。ブロックチェーン技術のもつ透明性と、改ざん困難な特性が生かされています。ブロックチェーン技術が実際にどのように活かされているのかを知ることは、技術の本質をするために重要です。

具体的な活用事例を交え、どのように課題を解決しているか紹介しましょう。

サプライチェーンの課題とブロックチェーンを活用するメリット

たとえば、リンゴが実際に消費者に届くまでには、以下のような過程があります。

1.農家がリンゴを栽培し、収穫する

2.収穫されたリンゴは、選果場で選別・包装される

3.包装されたリンゴは、卸売業者に運ばれる

4.卸売業者は、スーパーにリンゴを販売する

5.スーパーは、消費者にリンゴを販売する

この一連の流れが、リンゴのサプライチェーンです。上記すべての工程が別々の企業によって行われるため、万が一品質不良などの問題が起こった際の確認作業は、「どの企業で、どのタイミングで発生した?」というのを遡って見つけていく必要があり、膨大な時間を必要とします。

そこで、「商品にタグをつける」要領でブロックチェーンの仕組みを取り入れ、まず情報を改ざん困難な状態で共有します。まずこれだけでも企業間で、収穫日や検品日、発送日といった情報を共有することが容易になるだけでなく、産地偽装や責任逃れも防止できるメリットがあります。透明性や効率性が増すだけでなく、「改ざん困難」という所がポイントになっています。

サプライチェーンでのブロックチェーン活用事例3選

トヨタ自動車

(引用:トヨタ自動車

トヨタ自動車は、2019年4月に「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」を立ち上げ、ブロックチェーン技術の活用に向けた取り組みを実施しています。

サプライチェーン分野では、部品製造、発送などに関する情報を記録・共有することにより、業務プロセスの効率化やトレーサビリティ向上に活用されています。

※トレーサビリティ=製品や情報の追跡可能性を意味し、製品の生産から消費までの全過程を追跡すること

さらに、車両情報や事故履歴などもブロックチェーンに記録して顧客と共有することで、顧客満足度の向上も図っています。

ホームロジスティクス(ニトリグループ)

(引用:ホームロジスティクス

ニトリグループの物流子会社ホームロジスティクスは、700億円規模のニトリの物流を担うと共に、他の企業に関する20億円規模の物流を請け負っています。

ブロックチェーンを活用することでトラックの現在地や作業内容を追跡し、積載率が向上。配送から帰るトラックの荷台が空でないように、より効率的な配送が可能となります。

さらに、将来的には自社で開発した物流システムを他社にも提供するプラットフォームとして展開し、新たな収益源として育てていく計画があります。

SEMI

SEMI(国際半導体製造装置材料協会)は、半導体製造装置の規格を決める団体です。日本地域では、ブロックチェーンを活用した半導体トレーサビリティの規格化を進めています。

世界的に半導体不足が深刻化している影響で、不正品の半導体が多く市場に出回っています。本物かどうか調べるサービスの需要が高まっていますが、検品には多くの時間とコストがかかってしまうのが課題です。

ブロックチェーンを活用することで、半導体が辿ってきたルート情報の改ざんを防ぎ、事前に事故を予防できます。

まとめ

今回はサプライチェーン分野におけるブロックチェーンの活用事例について紹介しました。SDKI.jpの調査分析によると、日本のサプライチェーン管理市場は2022年の約80億ドルから、2035年には約280億ドルまで拡大すると予想されています。(※参考:日本のサプライチェーン管理 市場規模

技術の進歩によりサプライチェーンがより複雑化していくなか、透明性や安全性も求められています。それらを一手に解決する技術として、今後ブロックチェーンの活用場面はさらに広がることでしょう。